2026年11月現在、アジア人差別は海外での暴言や暴力だけでなく、職場での不平等な扱い、住宅探しでの入居拒否、インターネット上のヘイトスピーチなど、日常生活のさまざまな場面で確認されている。特に注目されるのが、2026年5月1日に反アジア系差別の監視団体Stop AAPI Hateが公表した2025年の調査結果だ。米国のアジア系・太平洋諸島系(AA/PI)成人の49%が、2025年に人種・民族・国籍を理由とするヘイト行為を経験したと回答した。
一方、FBIの2025年ヘイトクライム統計、日本の法務省による人権侵犯事件の資料、NORCとシカゴ大学による調査を照合すると、差別の実態は単純な犯罪件数だけでは捉えられないことも分かる。どの国で何が起きているのか、なぜ差別が繰り返されるのか。歴史的背景から最新の統計、職場やネットでの被害、具体的な相談・通報方法まで整理する。
【2026年最新】アジア人差別はどこで、どのように起きているのか
アジア人差別を考えるうえで、まず押さえたいのは、差別が必ずしも暴力事件として表面化するわけではないという点だ。
本人に向けられた侮辱、外国人扱い、採用や昇進での不利益、サービスの利用拒否、オンライン上の排斥発言なども、広い意味での差別やヘイト行為に含まれる。
米国では成人の49%が2025年にヘイト行為を経験
Stop AAPI Hateが2026年5月に発表した第3回「State of Anti-AA/PI Hate」報告書では、米国のAA/PI成人の49%が、2025年に人種・民族・国籍を理由とするヘイト行為を経験したと報告された。
この数字は2023年の49%、2024年の53%と統計的に大きな差がなく、3年連続で約半数という水準が続いている。
調査は、シカゴ大学のNORCが2026年1月5日から12日に実施したもので、回答者は1,378人。調査全体の公表誤差幅は±4.57ポイントだった。
重要なのは、49%という数字が殺人や暴行などの犯罪経験率ではないことだ。
調査で確認された主な行為は次のとおり。
- 嫌がらせ・侮辱などのハラスメント:44%
- 制度・組織を通じた差別:23%
- 身体的な危害や接触:13%
- 財産への被害:10%
また、ヘイト行為が発生した場所として、オンラインが43%、公共空間が40%、店舗などの事業施設が36%だった。
つまり、差別の中心は必ずしも路上での暴力ではない。SNSでの攻撃、買い物中の嫌がらせ、制度上の不利益など、生活のあらゆる場所に存在している。
加えて、ヘイト行為を経験した人のうち、正式な機関や組織に報告した人は22%にとどまった。被害が統計に反映されない背景には、通報をためらう人の存在もある。
FBIの2025年ヘイトクライム統計が示す数字
米連邦捜査局(FBI)は2026年8月14日、2025年のヘイトクライム統計を公表した。
米国内の警察機関などから報告された数字は以下のとおり。
- ヘイトクライム事件:10,881件
- 被害者:13,438人
- 関連犯罪行為:13,026件
- データ提出に参加した機関:16,791機関
2024年の11,679件と比較すると、2025年の報告事件数は約7%減少している。
ただし、この減少をもってアジア人差別が解消したと判断することはできない。
Arab American InstituteがFBIのCrime Data Explorerのデータを整理した2025年の集計では、反アジア系のヘイトクライムは339件だった。同じ集計表では2024年が402件となっている。
この数字は警察に把握され、ヘイトクライムとして分類された事件であり、日常的な侮辱や差別をすべて含むものではない。
また、FBIのデータは参加機関の報告状況や捜査上の分類によって変動する。2025年分についても、データベースの更新によって数値が変わる可能性がある。
日本でも差別は住宅・職場・ネットに広がる
日本の実態を把握する資料として重要なのが、出入国在留管理庁の「令和6年度在留外国人に対する基礎調査」だ。
18歳以上の中長期在留者と特別永住者を対象に実施され、有効回答は7,621人、回答率は38.9%だった。
調査では、差別を受けた場面として、次の項目が上位に挙がっている。
- 家を探すとき:17.4%
- 仕事をしているとき:14.2%
- 仕事を探すとき:12.4%
加えて、回答者の12.7%がヘイトスピーチを受けた経験があり、31.6%は自分では受けていないものの、見聞きした経験があると答えた。
ヘイトスピーチを受けたり見聞きしたりした場所では、インターネットが65.5%で最多だった。
この調査はアジア出身者だけを対象としたものではない。しかし、中国、ベトナム、フィリピン、韓国などの出身者も含む在留外国人の生活実態を把握する資料として重要だ。
【国別比較】アジア人差別が確認されている国と最新データ
「アジア人差別が多い国」を知りたい人は多い。しかし、世界共通の定義で各国の差別経験を測定したランキングは存在しない。
警察が認定するヘイトクライム、住民アンケートによる差別経験、民間団体への被害申告では、測定対象が違うためだ。
それを踏まえ、2026年11月時点で確認できる米国、カナダ、オーストラリア、日本の資料を比較する。
| 国・地域 | 調査・統計 | 主な数値 | 調査から分かること |
|---|---|---|---|
| 米国 | Stop AAPI Hate・NORC 2025年調査 | AA/PI成人の49% | 2025年のヘイト経験が約半数に及ぶ |
| 米国 | FBI 2025年統計の集計 | 反アジア系339件 | 警察に報告・分類された犯罪の実態 |
| カナダ | Statistics Canada 2025年統計 | 東・東南アジア系151件、南アジア系483件 | 出身地域によって被害の推移が異なる |
| オーストラリア | Scanlon Foundation 2024年調査 | インド生まれ45%、中国生まれ39%、東南アジア生まれ35% | 民族的背景による差別経験の違い |
| 日本 | 令和6年度在留外国人基礎調査 | ヘイトスピーチ経験12.7% | 外国人住民の日常生活における被害 |
アメリカ:政治的対立と反移民感情が背景に
米国では、アジア系住民が人種的な偏見と移民政策をめぐる対立の両方にさらされる状況がある。
Stop AAPI Hateの2025年調査では、AA/PI成人の53%が、自分自身または身近なAA/PIの知人が移民政策の変更や反移民感情による悪影響を受けたと回答した。
また、パシフィック・アイランダー成人のヘイト経験率は、2024年の47%から2025年には57%に上昇した。
ただし、アジア系と太平洋諸島系は異なる民族・地域的背景を持つ集団であり、両者を同一視することは適切ではない。
カナダ:東アジア系と南アジア系で異なる傾向
Statistics Canadaが2026年7月に公表した2025年の警察報告ヘイトクライム統計では、東・東南アジア系を標的とした事件が151件、南アジア系を標的とした事件が483件だった。
前年との比較では、東・東南アジア系は14%減少した一方、南アジア系は49%増加している。
同じ「アジア系」という分類の中でも、地域や民族によって被害の状況が異なることを示す数字だ。
特に南アジア系を標的とした事件の増加は、カナダの2025年統計における重要な特徴となっている。
オーストラリア:出身国による差別経験の違い
Scanlon Foundation Research Instituteの「Mapping Social Cohesion 2024」では、2024年の調査において、民族的出身、肌の色、宗教を理由とした過去12か月の差別経験が分析された。
出身国別の推計では、インド生まれの人が45%、中国本土生まれが39%、東南アジア生まれが35%だった。
これらはオーストラリア生まれの人と比較して差別経験が多い傾向を示している。
職場での不公平な扱いや、社会に属していないと感じさせる対応も調査対象となっている。
日本:外国人住民への差別は生活上の問題として表れる
日本では、外国人住民が住宅探しや就職、職場での人間関係などで差別を経験している。
法務省が2026年3月に公表した2025年の人権侵犯事件の状況によると、新規に救済手続を開始した事件は8,207件。そのうち、インターネット上の人権侵害情報に関する事件は1,569件だった。
法務局が把握したヘイトスピーチの具体例には、日本国内に住む外国人住民の集団を害虫に結び付ける投稿がある。
調査の結果、法務局は不当な差別的言動に該当すると判断し、サイト管理者に情報提供を行った。その後、投稿は削除された。
ただし、8,207件や1,569件は、アジア人差別だけを数えた統計ではない。人権侵犯事件全体とインターネット上の人権侵害情報を含む数字である。
【歴史と背景】なぜアジア人差別は繰り返されるのか
アジア人差別は、新型コロナウイルスの流行によって突然生まれた問題ではない。
移民排斥、戦争、経済的対立、民族的ステレオタイプが長い時間をかけて積み重なり、社会の中に偏見を残してきた。
1882年:中国人排斥法による移民制限
米国のアジア人差別を理解するうえで重要なのが、1882年5月6日に成立したChinese Exclusion Act(中国人排斥法)だ。
この法律は、中国人労働者の米国への移民を10年間禁止する内容で、米国で特定の民族集団を対象にした最初の大規模な移民制限法だった。
当時の経済不安や雇用競争を背景に、中国人労働者が社会問題の原因であるかのように扱われた。
その後、排斥政策は更新・拡大され、アジア系住民を社会の外側に置く制度的な差別につながった。
1942年:日系アメリカ人の強制収容
1941年の真珠湾攻撃後、米国では日系人への敵視が強まった。
1942年2月19日、フランクリン・ルーズベルト大統領が大統領令9066号に署名。これを受け、米国西海岸などの日系人が強制的に移住させられ、収容された。
対象には米国市民も含まれていた。
1988年には、米国議会が強制収容の不正義を認め、謝罪と補償を定める法律を成立させている。
この歴史は、国際情勢に対する不安や敵意が、同じルーツを持つ国内住民に向けられる危険性を示している。
1982年:ビンセント・チン事件
1982年6月、デトロイトで中国系アメリカ人のビンセント・チンが、2人の白人男性から暴行を受け、死亡した。
当時の米国では、日本車の台頭によって自動車産業の雇用不安が高まっていた。
加害者はチンを日本人と誤認し、アジア系住民に向けられた反日感情や雇用不安を暴力に結び付けた。
この事件は、アジア系アメリカ人の権利運動を広げる転機となった。
中国系であるチンが、日本に対する経済的な敵意によって攻撃された点は重要だ。加害者にとっては、個人の国籍や出自よりも、外見による人種的な分類が優先されていた。
2020年:新型コロナによる差別の急増
新型コロナウイルスの流行は、アジア人差別の新たな拡大につながった。
ウイルスの発生地を理由に、アジア系住民全体を感染拡大の責任者のように扱う言説が広がり、暴言や嫌がらせ、暴力事件が発生した。
米司法省が公表したFBIの2020年統計では、反アジア系ヘイトクライムは279件で、2019年から77%増加した。
Stop AAPI Hateの2026年報告書も、2020年のパンデミック期に急増した差別が、その後も続いていることを指摘している。
感染症への恐怖が、特定の民族や外見への敵意に変換される構造は、差別が社会的な不安と結び付いて拡大する典型例だ。
現代にも残る3つのステレオタイプ
米国のPew Research Centerは、アジア系アメリカ人への差別を理解するうえで、代表的な固定観念を取り上げている。
1. 永遠の外国人(Forever Foreigner)
何世代も米国に住んでいる人や米国生まれの市民であっても、アジア系という外見だけで外国人扱いされる現象だ。
Pew Research Centerの2023年調査では、アジア系成人の78%が、日常生活で外国人として扱われた経験に関連する出来事を少なくとも一つ経験していた。
2. モデル・マイノリティ(Model Minority)
アジア系は勉強ができる、数学が得意、経済的に成功しているといった固定観念だ。
一見すると肯定的な評価に見えるが、個人の能力や経済状況を無視し、失敗や困難を表明しにくくする問題がある。
また、アジア系集団の内部にある貧困や教育格差、移民背景の違いも見えにくくなる。
3. 黄禍論(Yellow Peril)
アジア系の人々を、欧米社会や文化にとっての脅威として描く歴史的な思想だ。
人口増加、経済競争、国際政治上の対立などを背景に、アジア系住民を危険な集団として扱う言説が形成されてきた。
これらの固定観念は互いに矛盾するように見える。しかし、アジア系を個人ではなく一括りの集団として扱う点で共通している。
【日常生活の実態】職場・住宅・インターネットで起きる差別
アジア人差別を暴力事件だけで考えると、日常生活に潜む問題を見落としてしまう。
2025年のStop AAPI Hate調査でハラスメントが44%、制度的差別が23%に達したことは、目に見える暴力以外の被害が大きいことを示している。
職場における人種差別
職場での差別は、露骨な暴言だけではない。
具体的には次のような行為が問題となる。
- 人種や国籍を理由に採用を拒否する。
- 同等の能力や実績があるのに昇進の機会を与えない。
- 特定の国籍の従業員だけに雑用を集中させる。
- 出身国や外見について繰り返し侮辱的な発言をする。
- 本人の能力を確認せず、語学力や専門性を低く評価する。
- 人種的な嫌がらせを訴えた従業員に不利益な対応をする。
日本の在留外国人基礎調査でも、差別を受けた相手として職場関係者が31.4%を占めた。
仕事をしているときに差別を受けたという回答も14.2%あり、住宅問題と並んで職業生活に関係する被害が確認されている。
特に、採用や昇進の判断理由が不透明な場合、本人が人種差別を証明することは容易ではない。
そのため、採用通知、評価資料、メール、業務指示など、判断過程を確認できる記録が重要になる。
インターネット上のヘイトスピーチ
SNSや動画投稿サイト、掲示板では、匿名性を背景に差別的な言葉が広がることがある。
典型的な例は次のとおり。
- アジア系住民を一括りにして排斥を呼び掛ける。
- 国籍や民族を理由に犯罪者扱いする。
- 感染症や社会問題の責任を特定民族に押し付ける。
- アジア系の外見を侮辱する画像や動画を投稿する。
- 特定の地域や店舗に対する差別的な攻撃を扇動する。
Stop AAPI Hateの2025年調査では、ヘイト行為の発生場所としてオンラインが43%を占めた。
日本でも、在留外国人基礎調査で、ヘイトスピーチを受けたり見聞きしたりした場所の65.5%がインターネットだった。
ネット上の差別は、投稿者と被害者が直接顔を合わせないため、発言への心理的な抵抗が弱まりやすい。加えて、投稿の転載やスクリーンショットによって、元の投稿が消えた後も被害が続くことがある。
「冗談だから差別ではない」は本当か
差別かどうかを判断するとき、発言者が冗談のつもりだったかどうかだけでは不十分だ。
例えば、相手の外見を見て出身国を勝手に決めつける、英語が話せないと決めつける、特定の民族は全員同じ能力を持っていると扱うといった行為は、本人の意思や個性を無視することにつながる。
もちろん、すべての不適切な発言が犯罪になるわけではない。
しかし、犯罪に該当しないからといって、差別的な扱いが正当化されるわけでもない。
【統計の正しい読み方】49%とFBIの犯罪件数はなぜ違うのか
アジア人差別をめぐる統計を読む際には、数字の意味を区別する必要がある。
特に重要なのは、被害経験率と警察が把握した犯罪件数を混同しないことだ。
民間調査と警察統計は対象が違う
Stop AAPI Hateの調査は、本人が経験したヘイト行為をアンケートで把握するものだ。
そのため、侮辱や嫌がらせ、制度的な不利益など、警察に通報されない被害も含まれる。
一方、FBIのヘイトクライム統計は、警察機関などが把握し、犯罪として報告・分類した事件を集計する。
したがって、49%という経験率と339件という反アジア系事件数を直接比較することはできない。
FBIの数字が実際の被害をすべて示さない理由
FBIの統計には、次のような制約がある。
- 被害者が警察に通報しない場合、統計に反映されない。
- 警察が人種的動機を確認できない場合、ヘイトクライムとして分類されないことがある。
- 参加する警察機関や報告方法によって数字が変動する。
- 侮辱や差別的な発言だけでは、犯罪として扱われない場合がある。
FBIの2025年統計では、ヘイトクライムデータの提出機関は16,791機関で、対象人口の95.3%をカバーした。
大規模な統計であっても、把握された事件数と実際の被害総数は一致しない。
国別ランキングが成立しない理由
米国、カナダ、オーストラリア、日本では、差別の定義や警察への報告制度、調査対象が異なる。
例えば、米国の49%は民間団体が実施した経験調査であり、カナダの151件は警察に報告された東・東南アジア系へのヘイトクライムだ。
オーストラリアの45%はインド生まれの人を対象とする差別経験の推計で、日本の12.7%は在留外国人へのヘイトスピーチ経験率である。
これらを単純に並べて、特定の国が最も差別的だと結論付けることはできない。
欧州安全保障協力機構(OSCE)も、国によって法律、監視方法、記録の仕方が異なるため、各国のヘイトクライム統計を単純比較することを推奨していない。
数字を評価するときは、件数だけでなく、調査対象・質問内容・集計方法・報告率を確認することが欠かせない。
【相談先と通報方法】アジア人差別を受けたときの具体的な対策
差別を受けた場合、被害を我慢する必要はない。
日本国内か海外か、また差別が犯罪に該当するかどうかによって相談先は異なる。
日本国内で相談できる窓口
1. みんなの人権110番
法務省の人権相談窓口で、差別やハラスメントなど幅広い人権問題を相談できる。
- 電話番号:0570-003-110
- 受付時間:平日8時30分~17時15分
- 対応:法務局職員または人権擁護委員
相談内容や個人情報の秘密は守られる。
2. 外国語人権相談ダイヤル
日本語での相談が難しい人向けの窓口。
- 電話番号:0570-090-911
- 受付時間:平日9時~17時
- 対応言語:英語、中国語、韓国語、フィリピノ語、ポルトガル語、ベトナム語、ネパール語、スペイン語、インドネシア語、タイ語
外国語のインターネット人権相談受付窓口も利用できる。
3. 警察への相談
暴行や脅迫、器物損壊などの被害がある場合は警察に相談する。
- 緊急時:110番
- 緊急性のない相談:#9110
4. 職場の差別は総合労働相談コーナー
厚生労働省の総合労働相談コーナーでは、採用、解雇、いじめ、嫌がらせ、ハラスメントなど、幅広い労働問題を扱っている。
外国人労働者向けの多言語対応もあり、相談は無料で予約も不要だ。
米国でヘイトクライムを通報する方法
米国で人種差別を伴う暴行や脅迫などの犯罪被害に遭った場合、米司法省は次の手順を案内している。
1. 緊急時は911に電話する。
2. 地元の警察に事件を報告する。
3. FBIにも情報を提供する。
4. 必要に応じて司法省の公民権部門にヘイト行為を報告する。
FBIへの通報方法は次のとおり。
- 電話:1-800-225-5324
- オンライン:FBIのTips窓口
- 最寄りのFBI支局への連絡
FBIへの通報は匿名でも可能だ。
犯罪に該当しない差別的な嫌がらせについても、米司法省のCivil Rights Divisionに報告できる。
被害を受けたときに残しておくべき証拠
相談や通報をするときは、可能な範囲で次の情報を保存しておくとよい。
- 発生日時と場所
- 相手の発言や行動の具体的な内容
- 相手の特徴や服装
- 目撃者の名前や連絡先
- SNSの投稿画面、アカウント情報、投稿日時
- メールやメッセージの履歴
- 物的被害やけがの写真、診断書
特にネット上の被害は、投稿が削除される前にスクリーンショットや投稿情報を保存することが重要だ。
ただし、証拠を集めるために加害者へ接近したり、危険な状況で撮影したりする必要はない。自分の安全を最優先にする。
【よくある質問】アジア人差別に関するFAQ
Q1:アジア人差別が最も多い国はどこですか?
A1:世界共通の基準による信頼できる国別ランキングは存在しない。米国ではStop AAPI Hateの2025年調査でAA/PI成人の49%がヘイト行為を経験し、カナダやオーストラリアでもアジア系住民の差別経験やヘイトクライムが公的統計・調査で確認されている。
Q2:アメリカではアジア人の49%が暴力被害に遭ったのですか?
A2:違う。49%は人種・民族・国籍を理由とするヘイト行為の経験率であり、暴力だけを示す数字ではない。嫌がらせや制度的差別も含まれる。身体的な危害や接触を経験した割合は13%だった。
Q3:日本にもアジア人差別はありますか?
A3:ある。住宅探しや職場、就職活動、インターネット上などで、外国人住民への差別やヘイトスピーチが確認されている。法務省は人権相談や削除要請などの対応を行っている。
Q4:アジア人差別を受けたら、どこに相談すればよいですか?
A4:日本国内なら法務省の「みんなの人権110番」(0570-003-110)や外国語人権相談ダイヤル(0570-090-911)が利用できる。暴行や脅迫など緊急性のある犯罪被害は110番に通報する。
Q5:ヘイトスピーチはすべて犯罪になりますか?
A5:すべてが犯罪になるわけではない。差別的な言動と、暴行・脅迫・器物損壊などの犯罪は区別される。ただし、犯罪に該当しない場合でも、人権侵害として相談や救済の対象になることがある。
まとめ:アジア人差別の解消には実態の把握と具体的な行動が必要
2026年のアジア人差別をめぐる最新資料から見えてくるのは、差別が過去の歴史にとどまらず、現在も日常生活の中で繰り返されているという現実だ。
米国のStop AAPI Hateによる2025年調査では、AA/PI成人の49%がヘイト行為を経験した。FBIの2025年統計では、反アジア系のヘイトクライムも339件確認されている。
日本でも、在留外国人を対象とした調査で住宅や職場の差別が明らかになり、法務省の2025年資料ではインターネット上の人権侵害情報が1,569件に達した。
ここから押さえておきたい判断基準は3つある。
第一に、差別を暴力事件だけに限定しないこと。侮辱や嫌がらせ、採用や住宅での不平等な扱いも、人権問題として捉える必要がある。
第二に、統計の数字を正しく読むこと。経験率、警察への報告件数、法務局の救済手続件数は、それぞれ意味が異なる。単純な国別ランキングや前年比だけで社会の実態を判断してはいけない。
第三に、被害を受けた人が孤立しない仕組みをつくること。相談窓口を知り、証拠を保存し、職場や学校、行政、警察などが適切に対応することが欠かせない。
アジア人差別をなくすために必要なのは、特定の民族への理解を呼び掛けるだけではない。人種や国籍によって個人の尊厳や機会が左右されない制度を整え、差別を許容しない社会的な基準を共有することだ。
【プロの結論】
アジア人差別を測るうえで最も重要なのは、表面化した事件の数だけで社会の安全性を評価しないことだ。
49%という調査結果と、FBIの犯罪統計、法務省の人権侵犯事件は、それぞれ異なる角度から同じ問題の一部を示している。
数字に表れない被害を見落とさず、被害者が安心して声を上げられる環境をつくること。それが、2026年以降の差別対策に求められる本質的な課題である。