「知る」の謙譲語は何でしょうか。ビジネスメールや上司との会話、取引先への連絡では、「存じています」「存じ上げております」「存じません」など、似た表現がいくつも登場します。しかし、これらは必ずしも同じ意味や使い方ではありません。
2026年11月現在、文化庁の「敬語の指針」に基づいて整理すると、「知る」の謙譲語には主に「存じる」と「存じ上げる」があります。加えて、相手が知っていることを表す「ご存じ」は尊敬語に分類されます。ここを取り違えると、丁寧に話そうとしたつもりが、敬語の方向を間違えてしまうことがあります。
【結論】知るの謙譲語は「存じる」と「存じ上げる」の2種類
「知る」を目上の人に対してへりくだって表現するときは、「存じる」または「存じ上げる」を使います。
例えば、「その件は知っています」という表現は「その件は存じております」に、「田中様を知っています」は「田中様のことは存じ上げております」に言い換えられます。
ただし、この2つは単純に丁寧さの強弱だけで区別する言葉ではありません。文化庁の文化審議会答申「敬語の指針」(2007年2月2日)では、それぞれ異なる種類の謙譲語として整理されています。
「存じる」の意味と使い方
「存じる(ぞんじる)」は、「知る」「承知する」の意味を持つ謙譲語です。また、「思う」「考える」という意味でも使われます。
現代のビジネスシーンでは、次のような表現がよく使われます。
- その件については存じております。
- 以前からその情報は存じていました。
- 詳細については存じません。
- ご指摘の内容は正しいものと存じます。
最後の「存じます」は、「思います」の意味です。「存じる」は知識の有無だけでなく、自分の考えや判断を控えめに伝える場合にも使える点が特徴です。
「存じ上げる」の意味と使い方
「存じ上げる(ぞんじあげる)」は、「知る」の謙譲語です。特に、相手や敬意を示すべき人物を知っていることを表現する場合に適しています。
例えば、次のような使い方があります。
- 田中様のお名前は以前から存じ上げております。
- 先生のご活躍は存じ上げております。
- 申し訳ございませんが、その方のことは存じ上げません。
文化庁の「敬語の指針」でも、「存じ上げる」は「知っている」の謙譲語Ⅰとして明確に示されています。人物を言葉の上で立てる働きを持つ表現です。
【徹底比較】「存じる」と「存じ上げる」は何が違う?
2つの表現を使い分けるうえで重要なのは、何を知っているのか、そして誰に敬意を向けるのかという点です。
文化庁の敬語分類では、謙譲語はさらに「謙譲語Ⅰ」と「謙譲語Ⅱ」に分けられています。この違いを理解すると、なぜ2つの表現が存在するのかが分かります。
謙譲語Ⅰと謙譲語Ⅱの違い
謙譲語Ⅰは、自分側から相手や第三者に向かう行為について、その向かう先の人物を立てる表現です。
一方、謙譲語Ⅱは、自分側の行為や状態を、会話や文章の相手に対して丁重に伝える表現です。「丁重語」とも呼ばれます。
この分類に当てはめると、「存じ上げる」は謙譲語Ⅰ、「存じる」は謙譲語Ⅱに該当します。
知るの謙譲語・使い分け早見表
| 表現 | 敬語の種類 | 主な意味・用途 | 使用例 |
|---|---|---|---|
| 存じる | 謙譲語Ⅱ | 知る・承知する・思う | その件は存じております。 |
| 存じ上げる | 謙譲語Ⅰ | 人物などを知っている | 先生のお名前は存じ上げております。 |
| ご存じ | 尊敬語 | 相手や第三者が知っている | 社長はご存じです。 |
| 知っています | 丁寧語 | 知識があることを丁寧に伝える | その情報を知っています。 |
| 承知しております | 丁重な表現 | 事情や内容を理解・認識している | ご依頼の件は承知しております。 |
この表で特に覚えておきたいのは、「存じる」と「存じ上げる」は単純な丁寧さの違いではないということです。
「存じ上げる」のほうが必ず正しい、あるいは「存じる」は人物に使えないという絶対的なルールではありません。人物について「存じております」と表現することもできます。人物を立てる意図を明確にしたい場合には「存じ上げております」が適しています。
【ビジネス実践】知るの謙譲語を使った正しい例文10選
敬語は意味を理解するだけでなく、実際の場面で自然に使えることが大切です。ここでは、上司への報告、取引先へのメール、初対面の相手との会話など、日常的なビジネスシーンを想定した例文を紹介します。
1. 情報や事柄を知っている場合
例文:「その件については、以前から存じております。」
「知っています」を改まった形にした表現です。業務上の情報や出来事について話す際に適しています。
例文:「新しい制度の詳細については、まだ存じておりません。」
知らないことを伝える場合にも使えます。「知りません」よりも柔らかく、改まった印象になります。
2. 人物について知っている場合
例文:「以前から田中様のお名前は存じ上げております。」
相手の名前や存在を以前から知っていたことを伝える表現です。初対面の挨拶などでも使えます。
例文:「大変恐縮ですが、その方については存じ上げません。」
人物について面識や知識がないことを丁寧に伝える言い方です。否定形の「存じ上げません」も、文化庁の「敬語の指針」で使用例が認められています。
3. 自分の考えや判断を伝える場合
例文:「ご提案いただいた内容で問題ないかと存じます。」
「問題ないと思います」を丁重にした表現です。会議や取引先への返信などで使えます。
例文:「ご期待に沿えるものと存じます。」
自分の判断や見通しを控えめに伝える場合に適しています。
4. ビジネスメールで使う場合
例文:「お問い合わせいただいた件につきましては、すでに存じております。」
相手からの問い合わせに対して、情報を把握していることを伝えられます。
例文:「ご指摘の内容については、十分に承知しております。」
こちらは単に知っているというより、相手の指摘や事情を理解していることを示す表現です。
5. 初対面や改まった挨拶で使う場合
例文:「以前よりお名前を存じ上げておりましたので、本日お会いできて光栄です。」
相手の名前を以前から知っていたことと、実際に会えた喜びを自然につなげています。
例文:「先生のこれまでのご功績については、以前から存じ上げております。」
人物に対する敬意を込めながら、その人の実績を知っていることを伝える表現です。
【間違いやすい敬語】「ご存じ」「承知しております」との違い
「知る」の謙譲語を調べる人が迷いやすいのが、「ご存じ」「承知しております」「知っております」との違いです。どれも似た場面で使われますが、敬語の方向や意味は異なります。
「ご存じ」は尊敬語なので自分には使わない
「ご存じ」は「知っている」の尊敬語です。相手や目上の人が知っていることを表現します。
正しい例は次のとおりです。
- 社長はこの件をご存じですか。
- 先生もすでにご存じかと思います。
一方、自分自身について「私はご存じです」と表現するのは誤りです。自分の知識について話すなら「私は存じております」とします。
「承知しております」は単純な知識とは違う
「承知しております」は、事情や依頼内容を理解している、または受け入れているという意味合いを持ちます。
例えば、取引先からの依頼に対して「ご依頼の内容は承知しております」と返答するのは自然です。
しかし、人物の名前を知っているという意味で「その方を承知しております」とするのは、一般的な会話では不自然になりやすい表現です。この場合は「その方を存じ上げております」が適しています。
「存じ上げております」は二重敬語なのか
「存じ上げております」は、丁寧すぎるため二重敬語ではないかと疑問に思う人もいます。
しかし、この表現は文化庁の「敬語の指針」にも示されています。「存じ上げる」は謙譲語Ⅰ、「おります」は「いる」の謙譲語Ⅱに関係する表現であり、両者を組み合わせた形も認められています。
したがって、ビジネスメールや正式な会話で「存じ上げております」を使っても問題ありません。
【2026年最新】知るの謙譲語をめぐるネットの反応・炎上の噂の真相
「存じる」と「存じ上げる」の使い分けは、ビジネス敬語や日本語学習で迷いやすいテーマです。特に、丁寧さを重視するあまり、必要以上に敬語を重ねてしまうケースには注意が必要です。
2026年11月時点で確認できる文化庁の公的な解説では、基本となる考え方は文化審議会答申「敬語の指針」に沿っています。新しい言い換えが追加されたというより、従来の敬語分類を正しく理解することが実用上のポイントです。
誤解1:「存じ上げる」は「存じる」より常に正しい
これは正確ではありません。「存じ上げる」は人物などを立てる謙譲語Ⅰであり、「存じる」は聞き手に対して丁重に述べる謙譲語Ⅱです。
例えば、制度や契約内容について知っている場合は「その制度については存じております」が自然です。人物について敬意を込めて伝えるなら「その方のことは存じ上げております」が適しています。
誤解2:「存じ上げません」は失礼な言い方
「存じ上げません」は正しい敬語表現です。文化庁の「敬語の指針」でも、「存じ上げない」「存じ上げません」という否定形が使われることが説明されています。
ただし、知らないことを伝える際には、状況に応じて「詳しいことは存じておりません」「その方については存じ上げません」のように対象を明確にすると、誤解を防ぎやすくなります。
誤解3:敬語は長くするほど丁寧になる
敬語を何重にも重ねれば相手への敬意が増すわけではありません。大切なのは、誰の行為や知識について話しているのかを整理することです。
文化庁も、敬語を使う際には相互尊重を基本とし、過剰ではなく適度に使う考え方を示しています。
なお、「知る」の謙譲語をめぐるネット上の疑問や誤用の指摘を、特定の炎上事件や大規模な世論として扱えるだけの公的な調査データはありません。話題の中心は、実際には「存じる」と「存じ上げる」の違いや、「ご存じ」との混同といった日常的な疑問です。
こうした疑問を解消するには、SNS上の断片的な説明だけで判断するのではなく、文化庁の資料や国語辞典の語義を確認することが有効です。
【プロの結論】知るの謙譲語で失敗しない3つの判断基準
敬語の使い分けに迷ったときは、表現を暗記するだけでなく、話している対象と敬意の方向を確認すると判断しやすくなります。
判断基準1:知っている対象が事柄なら「存じております」
ニュース、制度、契約、業務上の情報など、知識や事柄について話す場合には「存じております」が適しています。
例:「新しい料金体系については存じております。」
判断基準2:敬意を示す人物なら「存じ上げております」
相手や目上の人物の名前、存在、経歴などを知っていることを伝える場合は「存じ上げております」が便利です。
例:「以前から部長のお名前は存じ上げております。」
判断基準3:相手が知っているなら「ご存じ」
自分ではなく、上司や取引先など相手側の人物が知っていることを表現する場合は「ご存じ」を使います。
例:「こちらの変更点については、すでにご存じでしょうか。」
この3つを押さえておけば、社内報告、営業メール、面接、取引先との会話など、幅広い場面で対応できます。
知るの謙譲語に関するよくある質問(FAQ)
Q1:知るの謙譲語は何ですか?
A1:「存じる」と「存じ上げる」です。「存じております」は情報や事柄について知っている場合、「存じ上げております」は敬意を示す人物について知っている場合に適しています。
Q2:「存じます」と「存じ上げます」の違いは何ですか?
A2:「存じます」は「知る」「承知する」のほか「思う」という意味でも使われます。「存じ上げます」は主に人物などを知っていることを敬意を込めて表す言葉です。
Q3:「知っています」をビジネスメールで言い換えるには?
A3:「存じております」が基本です。人物について伝える場合は「存じ上げております」、依頼や事情を理解している場合は「承知しております」も使えます。
Q4:「ご存じ」と「存じ上げる」は同じ意味ですか?
A4:意味の基本は共通していますが、敬語の方向が違います。「ご存じ」は相手を立てる尊敬語、「存じ上げる」は自分側をへりくだって人物を立てる謙譲語Ⅰです。
Q5:「存じ上げておりません」は正しい日本語ですか?
A5:正しい表現です。「存じ上げておりません」「存じ上げません」のどちらも使えます。人物について知らないことを丁寧に伝える場合に適しています。
まとめ:知るの謙譲語は対象と敬意の方向で使い分けよう
「知る」の謙譲語には「存じる」と「存じ上げる」があり、どちらもビジネスシーンで役立つ表現です。
特に覚えておきたいのは、次の3つの使い分けです。
- 自分が情報や事柄を知っている場合:「存じております」
- 敬意を示す人物について知っている場合:「存じ上げております」
- 相手が知っていることを表現する場合:「ご存じです」
また、「承知しております」は単に知識があるという意味だけでなく、事情や依頼内容を理解していることを伝える表現です。場面に合わせて使い分けることで、より自然な敬語になります。
2026年現在も、文化庁の「敬語の指針」に基づく基本的な考え方は、ビジネス日本語を理解するうえで重要な基準です。難しい敬語を無理に使うよりも、相手と自分の立場を考え、必要な敬意を適切な言葉で伝えることが、信頼されるコミュニケーションにつながります。