2026年現在、スイスでは一定の法的条件のもとで自殺幇助(じさつほうじょ)が認められており、日本を含む海外から渡航する人もいる。日本では原則として他人の自殺を手助けする行為が刑法上の処罰対象となるため、スイスの制度は日本人にとって大きな関心を集めるテーマだ。
実際に、スイス公共放送協会の国際部門SWI swissinfo.chは、2021年にスイスへ渡航した日本人男性と女性の事例を詳しく報道している。また、2026年2月の同メディアの報道では、ディグニタスによる2024年の自殺幇助件数や、日本から渡航した人の人数も明らかになった。スイス刑法115条、日本の刑法202条、ライフサークルやディグニタスなどの団体の役割を整理すると、制度の実態が見えてくる。
【制度の基本】スイスで日本人が選ぶ「尊厳死」とは?自殺幇助の仕組みを解説
スイスの尊厳死は法律上の「自殺幇助」
日本で「スイス尊厳死」と呼ばれることがある制度は、法律上は主に「自殺幇助(Assisted Suicide)」に該当する。
ここで重要なのは、スイスで認められているのは、医師や第三者が本人に代わって死をもたらす積極的安楽死ではないという点だ。
スイスでは、本人が自分の意思で最終行為を行うことが制度の根幹になっている。第三者が支援することはあっても、最終的な行為の主体は本人でなければならない。
この違いは単なる言葉の問題ではない。法律上の犯罪成立や医師の責任を判断するうえで、非常に大きな意味を持つ。
スイス連邦司法局が2026年3月5日に公表した説明でも、積極的安楽死と自殺幇助は明確に区別されている。
スイス刑法115条が定める法的な位置づけ
スイスの自殺幇助を理解するうえで欠かせないのが、スイス刑法115条だ。
同条は、利己的な動機から他人に自殺を教唆したり、実行を幇助したりした場合に、刑事罰を科すことを定めている。
刑罰は、5年以下の自由刑または罰金刑となる。
つまり、他人の自殺を支援する行為が一律に合法化されているわけではない。
重要なのは、支援者に利己的な動機があるかどうか、本人に判断能力があるかどうか、そして本人自身が最終行為を行うかどうかという点だ。
また、スイスには自殺幇助の手続き全体を統一的に規定する独立した連邦法は存在しない。刑法、麻薬法、医療倫理指針、各支援団体の自主規則などが組み合わさって制度を支えている。
自殺幇助と積極的安楽死の違い
両者は混同されやすいが、法律上は異なる。
| 比較項目 | 自殺幇助 | 積極的安楽死 |
|---|---|---|
| 最終行為 | 本人が行う | 医師など第三者が行う |
| 第三者の役割 | 本人の意思決定や医療面を支援 | 本人に代わって死をもたらす |
| スイスでの扱い | 一定条件下で認められる | 原則として犯罪となる |
| 主な法的根拠 | 刑法115条 | 刑法111条・113条・114条など |
| 判断の中心 | 本人の意思と判断能力 | 第三者による致死行為の適法性 |
スイスでは、本人の希望に基づいて医師などが直接死亡させる行為は、本人の嘱託があっても刑法114条などによる処罰対象となり得る。
一方、延命措置の差し控えや中止、苦痛を和らげる治療の結果として生命が短くなる可能性がある医療行為は、一定の条件下で認められている。
したがって、「スイスでは安楽死が合法」という説明だけでは、制度の実態を正確に理解できない。
【審査基準】スイスで自殺幇助が認められる条件と判断能力
スイス刑法115条そのものには、終末期の患者に限定するという明文の規定はない。
しかし、実際の医療現場では、法律上の条件だけでなく、スイス医科学アカデミー(SAMS)が定める医療倫理指針が大きな役割を果たしている。
同アカデミーの「死と死にゆく人への対応」に関する指針は、2018年に公表され、2021年に修正された。
審査で重視される4つの条件
SAMSの指針では、主に次の4項目が判断の対象となる。
1.判断能力があること
本人が自分の置かれた状況や意思決定の意味を理解し、その結果を考慮できることが必要になる。
認知機能や精神状態に問題が疑われる場合には、専門的な評価が重要になる。
2.本人の自発的で継続的な意思であること
周囲からの圧力や強制によるものではなく、本人が十分に考えたうえで示している意思でなければならない。
一時的な精神状態や、家族・介護者との関係によって意思が左右されていないかも確認される。
3.耐え難い苦痛が存在すること
医学的に確認できる重い病気や機能障害などによって、本人が耐え難い苦痛を抱えていることが求められる。
単に老齢であることや、周囲に迷惑をかけたくないという理由だけで、医療倫理上の条件を満たすわけではない。
4.ほかの選択肢が検討されていること
緩和ケアや治療、介護など、苦痛を軽減するための選択肢が検討されている必要がある。
判断能力の確認はなぜ重要なのか
自殺幇助の審査で特に重要なのが、本人の判断能力だ。
本人が自分の状況を理解し、意思決定の結果を認識し、自分の意思を表明できるかどうかが問われる。
SAMSの指針では、原則として少なくとも2回の詳細な面談を行い、その間に2週間以上の期間を設けることが示されている。正当な例外が認められる場合もある。
加えて、判断能力と本人の自発的意思については、医師以外の場合も含む独立した第三者による確認が求められる。
これは、本人の希望を尊重することと、本人が不当な圧力を受けていないことを確かめることの両方を重視する仕組みだ。
ただし、SAMSの指針は刑法そのものではない。法律上の要件と医療倫理上の要件を同一視してはいけない。
【関係団体を比較】ディグニタス・ライフサークル・エグジットの違い
スイスでは、民間の非営利団体などが自殺幇助に関する活動を担ってきた。
代表的な組織として知られるのが、ディグニタス(Dignitas)、ライフサークル(Lifecircle)、エグジット(EXIT)だ。
ただし、これらは同じ条件で活動しているわけではない。外国人の受け入れや会員制度にも違いがある。
スイスの主要な自殺幇助関連団体
ディグニタスは外国人も対象とする団体
スイス国内の居住者だけでなく、海外に住む人も対象としてきたことが特徴だ。
SWI swissinfo.chの報道によると、2022年末時点の会員数は11,856人で、その90%以上が国外居住者だった。
ただし、会員になった人全員が自殺幇助を受けるわけではない。医師の評価を通過しても、実際にはその選択をしない人もいる。
この点からも、会員数をそのまま実際の利用者数と解釈することはできない。
ライフサークルは2021年の日本人事例で知られる
医師エリカ・プライシヒ氏が代表を務め、日本人の渡航事例を報じたSWI swissinfo.chの記事にも登場している。
同団体については、2022年に新規会員の受け付けを停止したと報じられている。したがって、2021年の日本人事例を根拠に、2026年も同じ条件で新規の外国人を受け入れていると考えるのは適切ではない。
エグジットはスイス居住者を中心とする団体
ドイツ語圏・イタリア語圏のEXITでは、成人のスイス国民またはスイス国内に居住する外国人が会員の対象となる。
つまり、日本に住む日本国籍の人が一時的にスイスを訪れるケースと、スイスに居住する外国人とでは、利用できる制度が異なる。
2025年の活動実績では、同団体のドイツ語圏・イタリア語圏で1,421人が自殺幇助を受けたと発表されている。
【日本人の渡航事例】2021年の男性・女性と2024年の最新報道
日本人のスイス渡航事例を理解するうえで、重要な報道がいくつかある。
特に注目すべきなのは、同じ制度を利用しようとした人でも、最終的な選択が異なっていることだ。
2021年:ヨシさんと呼ばれた日本人男性
SWI swissinfo.ch・2021年9月24日公開
2021年9月、SWI swissinfo.chは、日本からスイスへ渡航した男性の体験を詳細に報道した。
記事で男性は「ヨシさん」という仮名で紹介されている。
報道によると、ヨシさんは40代前半の独身会社員で、運動ニューロン疾患が疑われる神経難病を抱えていた。
病気の進行によって身体機能が徐々に低下し、食事や会話など日常生活にも深刻な影響が出ていた。
ただし、記事ではALS(筋萎縮性側索硬化症)の確定診断がついていたわけではないことも説明されている。
ヨシさんは2018年にライフサークルへ連絡し、支援を認められていた。その後、病状の変化を受けて2021年にスイスへ渡航した。
彼が抱えていた問題は、身体的な苦痛だけではなかった。
仕事を続けることが難しくなり、社会とのつながりや自分の存在価値についても悩んでいたという。
最終的には、スイスで自殺幇助を受けた。
この記事で重要なのは、ヨシさんが自らの選択をどのように理解していたかという点だ。本人の意思と、家族が望む生き方は必ずしも一致していなかった。
SWI swissinfo.chは、本人だけでなく同行した両親の心情も含めて報道している。
2021年:渡航したものの帰国を選んだ「くらんけさん」
SWI swissinfo.ch・2021年10月15日公開
もう一つの重要な事例が、仮名「くらんけさん」として紹介された日本人女性だ。
当時30歳だった彼女は、6歳のときに神経難病と診断されていた。
長年の治療でも十分な改善が見られず、日常生活では家族の介護を必要としていた。
2019年9月、彼女はライフサークルに自殺幇助を希望する書類を提出し、翌月には受け入れを認める連絡を受けたと報じられている。
しかし、新型コロナウイルスの感染拡大による渡航制限などもあり、当初予定していた時期から延期された。
2021年夏、父親とともにスイスへ渡航した彼女は、最終的な判断を前に大きく揺れ動く。
その理由は、家族への思いだった。
父親の苦しむ姿を目の当たりにし、自分の意思を貫くべきかどうか迷いが生じたのである。
最終面談で本人が迷いを表明したことを受け、医師のエリカ・プライシヒ氏は、今は帰国した方がよいと伝えた。
彼女はその判断を受け入れ、父親とともに日本へ戻ることを選んだ。
この事例は、スイスで自殺幇助が認められているからといって、渡航した人全員が実際にその選択をするわけではないことを示している。
審査を通過することと、最後まで本人の意思が変わらないことは別の問題なのだ。
2015~2016年:ディグニタスを利用した日本在住者の報道
2017年4月、ニュースメディア「withnews」は、ディグニタスへの取材をもとに、日本在住者の利用実績を報じた。
報道によると、2015年には日本在住者1人、2016年には2人が同団体の支援を受けていた。
ただし、この3人のうち日本生まれだったのは1人だけで、残る2人は別の国籍だったという。
ここで注意したいのは、「日本在住者」と「日本国籍の人」は同じ意味ではないということだ。
居住地と国籍を区別しなければ、統計の読み方を誤ることになる。
2024年:ディグニタスで日本からの渡航者1人を確認
2026年2月28日公開のSWI swissinfo.chの日本語記事では、ディグニタスの2024年の活動実績が取り上げられた。
その内容は次の通りだ。
- 2024年の自殺幇助件数:280人
- うち国外居住者:260人
- 日本から渡航した人:1人
これは2026年時点で確認できる、日本からの渡航事例に関する重要な最新報道の一つだ。
ただし、この数字はディグニタスという一団体の実績であり、スイス全体の日本人利用者数ではない。
また、「日本から渡航した人」という表現と、日本国籍者の人数は必ずしも一致しない。
【日本の法律】刑法202条とスイス渡航時の法的な問題
スイスで自殺幇助が一定条件下で認められていても、日本の法律が無関係になるわけではない。
ここで重要になるのが、日本の刑法202条だ。
日本の刑法202条は自殺幇助を処罰する
日本の刑法202条は「自殺関与及び同意殺人」について規定している。
他人を教唆したり、幇助したりして自殺させた場合、また本人の依頼や承諾を受けて殺害した場合には、6か月以上7年以下の拘禁刑が定められている。
2025年6月の拘禁刑制度施行後、条文上の刑罰表記も変更されている。
日本では自殺そのものを処罰する規定はないが、他人がその自殺を支援する行為は別に評価される。
したがって、本人の意思が明確であったとしても、第三者の行為が刑法202条に該当する可能性は残る。
スイスで行われた行為に日本の刑法は適用されるのか
この問題は、単純に「日本人だから日本の法律が適用される」と説明できない。
日本の刑法1条は、原則として日本国内で行われた犯罪に同法を適用すると定めている。
一方、刑法3条には、日本国外で日本国民が行った場合にも処罰対象となる犯罪が列挙されている。
しかし、刑法202条は同条の国外犯の対象犯罪として列挙されていない。
そのため、スイス国内で完結した行為に、日本の刑法202条が当然に適用されると断定することはできない。
ただし、日本国内で自殺の教唆や幇助に該当する行為が行われた場合には、国内犯として問題になる可能性がある。
例えば、海外での行為だから日本の法律とは無関係だと一律に考えるのは危険だ。
実際の法的評価は、行為が行われた場所、関与の内容、本人との関係などによって異なる。具体的な案件では、日本とスイス双方の刑事法に詳しい専門家による個別判断が必要になる。
日本では尊厳死と安楽死の議論も区別する必要がある
日本では、延命措置の差し控えや中止、緩和ケアといった終末期医療の問題が議論されている。
しかし、これらは他人が本人の死を直接もたらす積極的安楽死や、自殺幇助とは異なる。
例えば、患者本人の意思を尊重して人工呼吸器などの延命措置を中止することと、第三者が自殺を手助けすることは、法的にも医療倫理上も同じではない。
日本で終末期医療を考える際には、延命措置の選択、苦痛緩和、意思決定支援、自殺幇助を分けて理解する必要がある。
【2026年最新データ】スイス尊厳死の実態と国外からの渡航問題
スイスの自殺幇助をめぐっては、利用者数の増加と、国外から訪れる人の実態把握が大きな課題になっている。
2024年のスイス国内の自殺幇助件数
スイス保健観測機関(Obsan)が連邦統計局のデータをもとに公表している統計では、2024年のスイス居住者の自殺幇助件数は1,774人だった。
比較すると、次のようになる。
- 2022年:1,594人
- 2023年:1,729人
- 2024年:1,774人
2022年から2024年にかけて増加傾向が続いている。
また、2023年の統計では、利用者の約91%が65歳を超えていた。主な背景として、がんや神経変性疾患などの重い病気が挙げられている。
ただし、これらはスイス居住者を対象とする統計であり、海外から渡航した人の数をそのまま含むものではない。
2025年のEXITの活動実績
2026年3月に公表されたEXITの2025年実績も注目される。
| 項目 | 2025年の実績 |
|---|---|
| 自殺幇助件数 | 1,421人 |
| 2024年の件数 | 1,235人 |
| 2025年末の会員数 | 195,836人 |
| 利用者の平均年齢 | 80歳 |
| 女性の利用者 | 818人 |
| 男性の利用者 | 603人 |
このデータはEXITのドイツ語圏・イタリア語圏の活動実績であり、スイス全体の統計ではない。
また、同団体の発表では、2025年の利用者のうち32%が末期がん患者で、23%が複数の疾患を抱えていた。
高齢化と重い疾病、身体機能の低下が、スイスの自殺幇助をめぐる議論の中心にあることがうかがえる。
国外からの渡航者は正確に把握されているのか
2026年の大きな論点が、いわゆる「自殺ツーリズム」の実態把握だ。
SWI swissinfo.chは2026年2月、日本など国外からスイスへ渡航する人の実態を報じた。
同報道によれば、スイスでは国外居住者の自殺幇助についても、死亡証明書などを通じて連邦当局に情報が伝わっている。
しかし、スイス連邦統計局は国内居住者を中心に統計を作成しており、国外居住者の情報については追加の照合を行っていない。
そのため、国外居住者の数値は体系的に検証された公式統計として公表されていない。
つまり、情報がまったく存在しないわけではなく、把握されている情報をどのように検証・公表するかが課題になっている。
2025年末、スイス議会は監視強化の提案を否決
国外からの渡航者に関する統計整備をめぐり、2025年末にはスイス議会で議論が行われた。
国外からの利用者数や自殺幇助の実態を把握するため、統計と監視の仕組みを整える提案が検討されたが、国民議会はこれを否決した。
2026年2月のSWI swissinfo.chの報道では、統計の追加整備には費用や行政負担が伴うことが、反対理由の一つとして紹介されている。
一方、制度の透明性や、支援を受ける人の安全性を確保するためには、より詳細なデータが必要だという意見もある。
ここには、本人の自己決定を尊重することと、社会として制度を監督することの間にある難しい問題が表れている。
【プロの結論】スイス尊厳死を理解するうえで見落としてはいけない5つの視点
2026年のスイス尊厳死をめぐる情報を読み解くとき、特に注意したい点が5つある。
1.「合法」と「誰でも利用できる」は違う
スイスで自殺幇助が一定条件下で認められていることは事実だ。
しかし、外国人であれば誰でも自由に利用できる制度ではない。
団体ごとに会員資格や審査方針が異なり、医療倫理上の条件もある。
法律上の非処罰と、個別の支援を受けられるかどうかは別問題だ。
2.医師の判断と本人の意思は両方必要
本人が希望しているという事実だけで、審査が完了するわけではない。
判断能力、自発的意思、医学的な状況、ほかの選択肢についての検討などが重視される。
くらんけさんの事例は、最終的な意思確認が形式的な手続きではないことを示している。
3.渡航事例の数字は国籍と居住地を分けて読む
2024年のディグニタスの報道では、日本からの渡航者は1人だった。
一方、2015~2016年のwithnewsの記事では、日本在住者と日本国籍者の数字に違いがあることが明らかになっている。
「日本人」「日本在住者」「日本から渡航した人」は、それぞれ異なる統計上の区分だ。
4.家族の意思と本人の自己決定は必ずしも一致しない
2021年の2つの日本人事例は、制度を考えるうえで対照的だ。
ヨシさんは自身の考えを貫いた。一方、くらんけさんは家族への思いから帰国を選んだ。
どちらか一方を正解と決めることはできない。
本人の意思を尊重することと、家族の心理的負担や支援環境を考慮することは、同時に向き合わなければならない課題である。
5.尊厳を守る選択肢は自殺幇助だけではない
終末期医療を考える際には、緩和ケア、在宅医療、介護支援、心理的支援なども重要になる。
スイス医科学アカデミーも、死を望む気持ちを真剣に受け止めながら、本人が利用できる代替手段について検討する必要性を示している。
自殺幇助をめぐる議論は、単に合法か違法かという二択ではない。
本人の苦痛をどう軽減し、尊厳をどう守り、周囲の人々をどう支えるかという、医療・福祉・法律にまたがる問題なのである。
【スイス尊厳死を選ぶ日本人】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:日本人でもスイスで自殺幇助を受けることは認められている?
日本国籍であることだけを理由に、スイスの自殺幇助制度から一律に排除されるわけではない。ディグニタスなど、国外居住者を対象としてきた団体も存在する。ただし、判断能力や医学的状況などの審査があり、希望すれば必ず認められるものではない。
Q2:スイス刑法115条とは何?
利己的な動機から他人の自殺を教唆・幇助する行為を処罰する規定だ。5年以下の自由刑または罰金刑が定められている。利己的な動機がない場合の自殺幇助は、一定の条件下で処罰されない。
Q3:ディグニタスとライフサークルの違いは?
ディグニタスは国外居住者を受け入れてきた団体として知られる。ライフサークルは2021年の日本人渡航事例で報道された団体だが、2022年に新規会員の受け付けを停止したと報じられている。
Q4:スイスの自殺幇助と積極的安楽死は同じ?
異なる。自殺幇助では本人が最終行為を行う。積極的安楽死では医師など第三者が本人に代わって死をもたらす。スイスでは後者は原則として犯罪となる。
Q5:日本の刑法202条はスイスでの行為にも適用される?
一律には判断できない。日本の刑法は国内犯を原則とし、国外犯については適用対象が法律で定められている。刑法202条は日本人の国外犯を定める刑法3条には列挙されていない。ただし、日本国内で行われた教唆・幇助などは別途問題になる可能性がある。
Q6:2026年時点でスイスに渡航した日本人は何人いる?
スイス全体の日本人渡航者数を示す、検証済みの最新公式統計は公表されていない。2026年2月のSWI swissinfo.chの報道では、ディグニタスの2024年の実績として、日本から渡航した人は1人とされている。
まとめ:2026年のスイス尊厳死をめぐる現状と今後の課題
2026年現在、スイスの自殺幇助制度は刑法115条を法的な基盤とし、本人の判断能力や自発的意思、医学的な状況を重視する仕組みによって運用されている。
日本人の報道事例では、2021年に自殺幇助を受けたヨシさんと、最終段階で思いとどまり帰国したくらんけさんの存在が特に重要だ。
また、2026年2月の報道によって、ディグニタスの2024年の利用者280人のうち260人が国外居住者であり、日本からの渡航者が1人だったことも明らかになった。
一方、スイス国内では国外からの渡航者をめぐる統計の透明性、医療倫理、家族への配慮、制度の監督体制などが引き続き議論されている。
日本との最大の違いは、自殺幇助をめぐる法的な位置づけにある。しかし、その違いを理解するには、法律だけでなく医療、福祉、本人の意思、家族の心理的負担まで視野に入れる必要がある。
スイス尊厳死をめぐる本質的な問いは、単に死を選べるかどうかではない。本人の尊厳と自己決定をどう守り、苦痛を抱える人を社会全体でどう支えるかという問題なのである。