2026年3月12日、デュプランティスはスウェーデンのウプサラにあるIFUアリーナで開催されたモンド・クラシックに出場しました。この大会は世界陸連のワールド・アスレティックス・インドアツアー・シルバーに位置づけられる競技会です。
デュプランティスは5.65m、5.90m、6.08mをいずれも1回目で成功させ、最後に6.31mへ挑戦。これも1回目でクリアし、自身の世界記録を1cm更新しました。大会を通じて一度も失敗しなかった点も際立っています。
2位はノルウェーのソンドレ・グットルムセンで6.00m。ザカリー・ブラッドフォード、サム・ケンドリックス、カーティス・マーシャルが5.90mで続きました。2位以下との差は実に31cmです。
東京世界陸上2025の6.30mが更新された経緯
ひとつ前の世界記録は、2025年9月15日の東京世界陸上男子棒高跳び決勝で生まれた6.30mでした。
デュプランティスは国立競技場で6.30mを成功させ、世界選手権優勝と世界記録更新を同時に達成。2位のエマヌイル・カラリスは6.00mで、30cmの差がつきました。
その約6か月後、今度は自身の地元スウェーデンで6.31mに到達。東京での歴史的なジャンプを、さらに上回ったのです。
なお、2026年3月12日の世界陸連の大会報道では、デュプランティスにとって通算15回目の世界記録更新と紹介されています。単発の好記録ではなく、世界記録そのものを繰り返し塗り替えてきた選手であることがわかります。
【男子棒高跳び歴代世界記録】ブブカからデュプランティスまでの変遷

男子棒高跳びの歴史を理解するうえで欠かせないのが、セルゲイ・ブブカ、ルノー・ラビレニ、そしてデュプランティスの3人です。
ブブカが6mの壁を突破し、ラビレニが約21年間続いた室内記録を更新。そしてデュプランティスが6.20m台から6.30m台へと競技水準を引き上げました。
世界記録更新の主要な年表
出典:世界陸連の男子棒高跳び記録資料、公式競技結果、世界記録更新報道をもとに作成。
セルゲイ・ブブカ:6mの壁を破った伝説の選手
ブブカは1985年6月13日、パリで男子棒高跳び史上初の6.00mを成功させました。それまでの限界を大きく押し広げたジャンプであり、棒高跳びの歴史に残る転換点です。
世界陸連の殿堂入り紹介によると、ブブカは競技人生で世界記録を合計35回更新しました。その内訳は屋外17回、室内18回です。世界選手権では1983年から1997年までに6度優勝し、1988年ソウル五輪では金メダルを獲得しています。
ブブカの主な記録は、1993年の室内6.15mと1994年の屋外6.14mです。特に6.15mは、ラビレニが2014年に6.16mを成功させるまで約21年間維持されました。
ルノー・ラビレニ:ブブカの長期記録を破った選手
2014年2月15日、ウクライナのドネツクでラビレニが6.16mを成功させました。ブブカの室内6.15mを1cm上回り、世界記録保持者となりました。
この記録の意義は、単なる1cmの更新だけではありません。ブブカが築いた記録時代に終止符を打ち、次世代のデュプランティスへとつながる競技の進化を示した出来事でした。
アルマンド・デュプランティス:15回の世界記録更新
デュプランティスの特徴は、一度の記録更新で満足せず、自己記録を1cmずつ積み重ねていることです。2020年に6.17mで世界記録を初めて更新してから、2026年3月の6.31mまで、合計15回の世界記録更新を達成しました。
世界陸連の選手プロフィールでも、自己ベスト6.31m、世界記録保持者、世界ランキング1位と掲載されています。ブブカが長期間にわたって記録を積み上げたように、デュプランティスも記録更新を継続するタイプの選手です。
【室内・屋外の違い】6.31mは室内記録でも世界記録なのか?
男子棒高跳びの記録を調べる際、混乱しやすいのが室内と屋外の扱いです。6.31mはウプサラの室内競技場で記録されましたが、単なる室内最高記録ではありません。世界陸連の公式記録では、男子棒高跳びの世界記録として認められています。
1998年のルール変更がポイント
世界陸連の前身である国際陸上競技連盟(IAAF)は、1998年以降、屋根のある施設でもない施設でも世界記録を認定できるルールを採用しました。現在の棒高跳びでは、室内と屋外を別々の世界記録として扱うのではなく、両方の記録を同じ世界記録の基準で評価します。
ただし、1998年以前の記録には経過措置がありました。ブブカの室内6.15mは1993年の記録であり、屋外6.14mとは別の歴史的記録として扱われていました。2014年にラビレニが室内で6.16mを成功させた際、世界陸連はこれを正式な世界記録として認定しています。
現在の記録を整理すると、次のようになります。
- 男子棒高跳び世界記録:6.31m
- 記録した場所:スウェーデン・ウプサラ
- 記録した日:2026年3月12日
- 競技環境:室内
- 選手:アルマンド・デュプランティス
つまり、6.31mを「室内世界記録」とだけ紹介するのは不十分です。正確には、室内で達成された男子棒高跳びの世界記録です。
【6メートルの壁とは?】棒高跳びで記録を伸ばす難しさ
棒高跳びの6mは、単なる数字以上の意味を持っています。1985年にブブカが初めて成功するまで、男子選手にとって極めて高い技術的な目標でした。
助走・ポール・跳躍のすべてがかみ合う必要がある
棒高跳びは、助走のスピードをポールに伝え、ポールのしなりを利用して身体を上方へ運ぶ競技です。単純に脚力やジャンプ力だけを高めれば記録が伸びるわけではありません。
大きく分けると、次の要素が関係します。
- 助走速度:短い助走区間で十分なスピードを生み出す。
- 踏み切り:助走の運動エネルギーを効率よくポールへ伝える。
- ポールの反発:選手の体格や技術に適したポールを使い、しなりを生かす。
- 空中動作:身体を持ち上げ、バーを越えるための姿勢を作る。
- バークリアランス:身体の各部分がバーに触れないように通過する。
6mを超えるためには、これらの動作が高い精度で連動しなければなりません。ほんのわずかな踏み切り位置や身体のタイミングの違いが、成功と失敗を分けます。
なぜデュプランティスは6.30m台に到達できたのか
デュプランティスの強みは、助走の速さ、身体操作、空中での技術、そして競技中の安定性を高い水準で組み合わせている点です。
2026年3月のウプサラ大会でも、6.31mを含めて失敗なしで競技を終えました。これは単に高いバーを一度だけ越えたという話ではありません。記録挑戦に入るまでの高さを安定してクリアし、最後の大勝負に余力を残せる競技力を示しています。
また、世界記録が1cmずつ更新される背景には、選手の技術だけでなく、ポールの素材や設計、トレーニング、競技環境の進歩もあります。棒高跳びは、選手と道具が一体となって記録を作る競技なのです。
【2026年最新】男子棒高跳び世界ランキングと注目選手
世界記録だけでなく、現在の男子棒高跳びを誰がリードしているのかも気になるところです。
世界陸連が公表している男子棒高跳びの世界ランキングでは、2026年10月27日時点でデュプランティスが1位を維持しています。2位にはギリシャのエマヌイル・カラリスが入り、オーストラリア、ノルウェー、アメリカの有力選手が続きます。
2026年10月27日時点の上位選手
- 1位:アルマンド・デュプランティス(スウェーデン)
世界記録6.31m。世界ランキングでも首位。
- 2位:エマヌイル・カラリス(ギリシャ)
2026年8月27日にチューリヒで6.20mを記録。ランキング2位の有力選手。
- 3位:カーティス・マーシャル(オーストラリア)
世界大会でも安定した成績を残すトップ選手。
- 4位:ソンドレ・グットルムセン(ノルウェー)
2026年3月のモンド・クラシックでは6.00mを成功させて2位。
- 5位:サム・ケンドリックス(アメリカ)
5.90m以上の実績を持つ国際大会の有力選手。
特に注目したいのはカラリスです。2026年8月には6.20mを記録しており、世界記録保持者に次ぐ実力を示しています。ただし、6.20mと6.31mの間には11cmの差があります。棒高跳びではこの差は非常に大きく、世界記録を更新するにはさらなる技術的進歩が必要です。
なお、世界ランキングと年間最高記録ランキングは同じものではありません。世界ランキングは複数の競技成績などをもとに評価する順位であり、単純に年間の最高跳躍記録だけで決まるものではありません。
【男子棒高跳び世界記録】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:男子棒高跳びの世界記録は何メートルですか?
A1:2026年11月4日時点の世界記録は6.31mです。スウェーデンのアルマンド・デュプランティスが2026年3月12日にウプサラのモンド・クラシックで達成しました。
Q2:6.31mは室内記録ですか、屋外記録ですか?
A2:室内競技場で達成された記録です。ただし、現在の世界陸連の規則では、室内と屋外を区別せず世界記録を認定するため、6.31mが男子棒高跳びの世界記録です。
Q3:男子棒高跳びで初めて6mを跳んだ選手は誰ですか?
A3:セルゲイ・ブブカです。1985年6月13日にパリで6.00mを成功させました。
Q4:デュプランティスは何回世界記録を更新していますか?
A4:2026年3月12日の6.31mが、本人にとって通算15回目の世界記録更新です。最初の更新は2020年2月の6.17mでした。
Q5:東京世界陸上2025では何メートルを跳びましたか?
A5:2025年9月15日の男子棒高跳び決勝で6.30mを成功させ、世界記録と大会記録を更新して優勝しました。その後、2026年3月に6.31mへ更新しています。
まとめ:男子棒高跳びは6.31mから新たな歴史へ
男子棒高跳びの世界記録は、2026年3月12日にデュプランティスがウプサラで成功させた6.31mです。2025年東京世界陸上の6.30mから1cm更新し、通算15回目の世界記録更新を達成しました。
歴史を振り返ると、ブブカが1985年に6mの壁を破り、ラビレニが2014年に6.16mを記録。そしてデュプランティスが2020年から記録を積み上げ、ついに6.31mへ到達しています。
今後の見どころは、デュプランティスが自らの記録をさらに更新するのか、そしてカラリスらのライバルが6.30m台に迫れるのかという点です。
棒高跳びの歴史において、1cmは決して小さな差ではありません。6.31mという数字は、長年の技術革新とトップ選手たちの挑戦が積み重なった現在の到達点です。次の世界記録が生まれる瞬間にも、引き続き注目が集まります。
主な参考資料:世界陸連(World Athletics)の公式競技結果、世界記録・歴代記録資料、選手プロフィール、世界ランキング、世界陸連殿堂入り選手紹介、2026年3月12日付大会報道。