映画版のキャストを理解するには、原作と戯曲の関係も知っておきたいところです。
原作は江戸川乱歩の探偵小説
『黒蜥蜴』の原作は、推理作家・
物語の中心となるのは、美貌の女盗賊・黒蜥蜴と名探偵・明智小五郎の対決。黒蜥蜴は宝石商の岩瀬庄兵衛が所有する宝石と、その娘・早苗を狙います。
単純な犯罪劇ではなく、黒蜥蜴と明智の間に生まれる複雑な感情や、美に対する執着も物語の重要な要素です。
三島由紀夫による戯曲化が2作品をつなぐ
この戯曲をもとに映画化されたのが、1962年の大映版と1968年の松竹版です。
1968年版について、松竹は江戸川乱歩の原作を三島由紀夫が戯曲化し、それを深作欣二が映画化した作品として紹介しています。単に原作小説を再映画化したというより、三島の舞台作品を映画として再構成したという背景があります。
三島由紀夫が美輪明宏に黒蜥蜴を依頼した背景
1968年版を語るうえで外せないのが、美輪明宏と三島由紀夫の関係です。
当時の美輪は丸山明宏の芸名で活動していました。映画『黒蜥蜴』の公式紹介によると、三島からのオファーを受け、黒蜥蜴を演じることになりました。
美輪が演じる黒蜥蜴は、美しい絵画や宝石を愛し、自分だけの美の世界を築こうとする人物です。美輪自身の華やかな表現力や舞台で培った存在感と、役柄が持つ美への執着が重なったキャスティングでした。
【井上梅次と深作欣二】監督の違いが映画の個性を生んだ
同じ『黒蜥蜴』でも、1962年版と1968年版では監督が違います。
井上梅次監督の1962年版
この作品では、音楽や踊りを取り入れた演出が特徴です。主演の京マチ子を中心に、視覚的な華やかさと娯楽映画らしいテンポが生み出されています。
脚本を担当したのは
特に三島由紀夫が作詞にも関わっていることは、作品の音楽面を理解するうえでも興味深い点です。
深作欣二監督の1968年版
深作監督は当時、東映のヤクザ映画などで知られていましたが、今回の作品では美輪明宏の個性を生かした演出に取り組みました。
映画『美輪明宏ドキュメンタリー ~黒蜥蜴を探して~』の公式紹介では、美輪自身が深作を監督に指名した経緯も紹介されています。
脚本は成澤昌茂、撮影は堂脇博、音楽は冨田勲です。1962年版とは制作スタッフも大きく異なっています。
1968年版の音楽と美術にも注目
1968年版では、黒蜥蜴の美意識が物語の重要な軸になっています。
松竹の公式あらすじでは、黒蜥蜴が早苗の美しさに魅せられ、彼女を自分の美術館に加えようとする展開が描かれています。
また、明智小五郎と黒蜥蜴の関係も、単純な探偵と犯罪者の対立ではありません。互いの能力や価値観を認め合いながら、惹かれ合うという複雑な構図が作品に独特のロマンティシズムを与えています。
この点が、1962年版とは異なる1968年版の大きな見どころです。
【間違えやすいポイント】映画版と舞台版のキャストは別物
『黒蜥蜴』のキャスト検索で混乱しやすいのが、映画版と舞台版の出演者が同じ年に登場するケースです。
1968年の舞台版には天知茂が出演
パルコステージの公演資料によると、1968年には丸山明宏主演、松浦竹夫演出、天知茂共演による舞台『黒蜥蜴』が上演されています。
一方、同年8月14日公開の松竹映画版で明智小五郎を演じたのは木村功です。
つまり、次のように区別する必要があります。
- 1968年の映画版:明智小五郎役は木村功
- 1968年の舞台版:明智小五郎役は天知茂
同じ1968年の作品でも、映画と舞台では出演者が異なります。天知茂の名前を見つけて、松竹映画版の明智役と誤認しないようにしましょう。
歴代映画キャストを調べるときの3つの判断基準
作品情報を見分けるには、次のポイントが役立ちます。
1. 黒蜥蜴役を見る: 京マチ子なら1962年大映版、丸山明宏なら1968年松竹版。
2. 明智小五郎役を見る: 大木実なら1962年版、木村功なら1968年映画版。
3. 制作会社と監督を見る: 大映・井上梅次なら1962年、松竹・深作欣二なら1968年。
また、雨宮役も重要です。1962年版は川口浩、1968年版は川津祐介です。
こうした複数の情報を組み合わせれば、タイトルだけでは区別しにくい作品も判別できます。
【プロの結論】黒蜥蜴は主演俳優の違いから見ると面白い
2作品を比較すると、黒蜥蜴という人物の魅力は、演じる俳優によって異なる形で表現されていることが分かります。
1962年版の京マチ子は、映画スターとしての華やかさと存在感を生かした黒蜥蜴。井上梅次監督の音楽的な演出も相まって、娯楽映画としての魅力が際立っています。
1968年版の美輪明宏は、独自の美意識と舞台的な表現力を生かした黒蜥蜴です。三島由紀夫との関係や深作欣二との組み合わせも含め、作品そのものに強い個性があります。
どちらが優れているかという単純な比較ではなく、京マチ子の黒蜥蜴を楽しむなら1962年版、美輪明宏の黒蜥蜴を楽しむなら1968年版という選び方がおすすめです。
特に三島由紀夫の戯曲や美輪明宏の舞台表現に関心がある人には、1968年版から見ると作品の世界観をつかみやすいでしょう。
【黒蜥蜴のキャスト】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:1962年の映画『黒蜥蜴』で黒蜥蜴を演じたのは誰ですか?
A1:京マチ子です。1962年3月14日公開の大映版で、緑川夫人こと黒蜥蜴を演じました。監督は井上梅次です。
Q2:1968年の映画『黒蜥蜴』で黒蜥蜴を演じたのは誰ですか?
A2:丸山明宏です。現在の美輪明宏で、当時の芸名で出演しています。監督は深作欣二、配給は松竹です。
Q3:明智小五郎を演じた俳優は誰ですか?
A3:1962年版は大木実、1968年映画版は木村功です。2作品を区別する際の要点です。
Q4:川津祐介は『黒蜥蜴』で何の役を演じていますか?
A4:1968年松竹版で雨宮潤一を演じています。1962年大映版では川口浩が雨宮潤を担当しています。
Q5:松岡きっこはどちらの映画版に出演していますか?
A5:1968年の松竹版です。岩瀬早苗と桜山葉子を演じています。1962年版の早苗役は叶順子です。
Q6:1968年の『黒蜥蜴』で明智小五郎を演じたのは天知茂ですか?
A6:映画版では木村功です。天知茂は同じ1968年に上演された舞台版の出演者です。映画と舞台を区別する必要があります。
まとめ:黒蜥蜴のキャストは1962年版と1968年版で見分ける
映画『黒蜥蜴』のキャストを整理すると、1962年の大映版と1968年の松竹版では、主演から脇役、監督、音楽まで異なることが分かります。
最後に、覚えておきたい配役をまとめます。
- 1962年大映版: 京マチ子(黒蜥蜴)、大木実(明智小五郎)、川口浩(雨宮潤)、叶順子(岩瀬早苗)。
- 1968年松竹版: 丸山明宏(現・美輪明宏/黒蜥蜴)、木村功(明智小五郎)、川津祐介(雨宮潤一)、松岡きっこ(岩瀬早苗)。
- 監督の違い: 1962年版は井上梅次、1968年版は深作欣二。
- 原作・戯曲: 江戸川乱歩の小説を三島由紀夫が戯曲化。
2026年に『黒蜥蜴』を初めて見る人は、まず主演俳優と制作会社を確認すると、目的の映画版を間違えずに選べます。京マチ子と美輪明宏、それぞれが作り上げた黒蜥蜴の違いを見比べることも、この作品を楽しむ醍醐味です。