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『この世界の片隅に』2016年版と2019年版の違いを徹底比較!リンの真相も

安曇 春香 安曇 春香 • 更新: • 公開: • 読了約 19 分
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2016年に公開されたアニメ映画『この世界の片隅に』と、2019年に公開された『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』。両作品は同じ物語を土台にしていますが、後者には250カットを超える新規シーンが追加され、上映時間も129分から168分へと約39分長くなっています。単に未公開場面を付け足しただけではありません。白木リンと北條周作の過去、すずとリンの友情、戦後の枕崎台風などが描かれたことで、登場人物の印象や物語のテーマそのものが深まっています。

特に大きな違いは、2016年版では十分に描かれなかった白木リンの存在です。彼女の過去を知ると、すずが抱えていた嫉妬や孤独、周作との夫婦関係、そして自分自身の居場所を探す気持ちまで違って見えてきます。2026年に改めて両作品を比較するなら、上映時間だけでなく、追加された場面が物語全体にもたらした意味に注目したいところです。

【徹底比較】2016年版と2019年版は何が違う?最大の変更点は白木リンの物語

この世界の片隅にさらにいくつもの違い

最も大きな違いは、物語の中心に置かれる人間関係です。

2016年版『この世界の片隅に』は、広島市江波で生まれた浦野すずが、18歳で呉の北條家に嫁ぎ、戦時下の日常を懸命に生きていく姿を中心に描いています。

食料が不足するなかでの料理、家族との関係、近所の人々との交流、空襲によって変化していく生活。戦争という大きな歴史の流れを、一人の女性の目線から描いた作品です。

特に物語の人間関係では、すずと義姉・黒村径子の関係が重要な役割を担っています。

一方、2019年版は、すずが呉で出会う女性たちとの交流を大きく取り上げています。

その代表が遊郭で働く白木リンです。

2016年版にもリンとの出会い自体は登場します。しかし、その後の交流や周作との過去についてはほとんど掘り下げられていませんでした。

2019年版では、リンとの再会や会話、すずが彼女に対して抱く複雑な感情が描かれます。

その結果、2016年版では穏やかで少し天然な印象が強かったすずに、嫉妬や不安、女性としての葛藤といった別の側面が加わりました。

つまり、2019年版は物語の続きを描く続編ではなく、同じ出来事を異なる人間関係と心理描写から再構成した作品なのです。

【上映時間と追加シーン】129分から168分へ!250カット以上の内容とは

2019年版の上映時間は168分。2016年版の129分と比べると、約39分長くなっています。

新たに追加されたのは250カット以上。遊郭での出来事だけでなく、日常生活の描写や人物の心情、終戦後のエピソードまで幅広く盛り込まれています。

主な変更点を整理すると、次のようになります。

比較項目 2016年版 2019年版
公開日 2016年11月12日 2019年12月20日
上映時間 129分 168分
追加カット 基本となる劇場版 250カット以上を追加
白木リン すずとの出会いを中心に描写 過去やすずとの交流を詳しく描写
周作との関係 過去については深く触れない リンとの過去が明らかになる
テル 物語の中心には登場しない 花澤香菜が声を担当する重要な追加人物
戦後の描写 終戦までの物語が中心 枕崎台風など戦後の出来事も描写
作品のテーマ すずの日常と家族の関係 複数の人々の人生と居場所

追加されたのはリンの恋愛エピソードだけではない

250カット以上という数字から、リンのエピソードが追加の大部分を占めていると思われがちです。

しかし、実際には追加場面は物語全体にわたっています。

例えば、すずの何気ない表情や会話にも新しい描写が加わり、それまでの場面に対する印象まで変わってきます。

2016年版では何気なく聞き流していたセリフが、2019年版を見ると別の意味を持って感じられることもあります。

片渕須直監督も、追加シーンによって以前の場面のセリフや表情の受け取り方が変化すると説明しています。

この点が、一般的なディレクターズカット版と異なるところです。

2019年版は、映像を長くした作品というより、人物の内面を知った状態で同じ物語をもう一度体験する映画なのです。

【白木リンと周作の真相】すずとの交流に隠された過去とは?

2019年版で最も注目したいのが、白木リンという女性の存在です。

リンは呉の遊郭で働いている女性で、すずが道に迷って遊郭に入り込んだことをきっかけに出会います。

二人は育った環境も生活も異なりますが、同世代の女性として自然に心を通わせていきます。

すずにとってリンは初めて自分自身を認めてくれた女性

すずは絵を描くことが好きな女性です。

しかし、北條家に嫁いだ後は、妻として、嫁として、家族の一員としての役割を果たすことが日常の中心になっていきます。

自分が好きなことや、自分自身の価値を表現する機会は決して多くありません。

そんなすずに対し、リンは絵を描く才能を認めます。

北條家の嫁としてではなく、絵を描くことが好きな一人の女性としてすずに接したのです。

この出来事は、すずにとって大きな意味を持ちます。

片渕監督はJ-WAVEのインタビューで、リンとの出会いによって、すずが自分自身に対する認識を揺さぶられていく点を説明しています。

すずにとってリンは、単なる遊郭の知人ではありません。

自分が何者なのかを改めて考えるきっかけを与えてくれる存在なのです。

北條周作と白木リンにはどんな過去があった?

ここが2019年版で特に気になるポイントでしょう。

実は、周作にはすずと結婚する前に心を寄せていた女性がいました。それがリンです。

原作漫画では、周作が遊郭に通い、リンと親密な関係にあったことをうかがわせる描写があります。

ただし、二人の過去は直接的な説明だけで明らかになるわけではありません。

周作のメモ帳の切れ端など、物語に散りばめられた手がかりを通して、読者や観客が事情を理解していく構成になっています。

2019年版では、すずがリンと交流するなかで、夫とリンの過去に気づいてしまいます。

この事実は、すずにとって簡単に受け止められるものではありません。

自分が知らなかった周作の過去。自分よりも先に彼と親しくしていた女性。そして、自分にはないものを持っているように見えるリン。

すずはリンに親近感を覚える一方で、嫉妬や不安も抱くようになります。

リンとすずは単純な恋敵ではない

ここで重要なのは、リンとすずの関係を単なる三角関係として理解しないことです。

二人にはそれぞれ異なる事情があります。

すずは北條家の嫁として生活しながら、自分の存在価値を探しています。

リンは遊郭で働きながら、自分の人生と居場所を見つけてきた女性です。

すずが子どもを授からないことを悩み、嫁としての役割を果たせないのではないかと不安を打ち明ける場面では、リンは欠けているものがあっても人間の居場所は失われないという考えを伝えます。

この場面は、作品の中心的なテーマを象徴しています。

人は誰かと比べて優れているから価値があるのではありません。何かを持っていないからといって、生きる場所を失うわけでもないのです。

2016年版では見えにくかったすずの女性としての葛藤が、リンとの交流を通じて具体的に描かれるようになりました。

【テルちゃんと枕崎台風】2019年版で追加された重要エピソード

リン以外にも、2019年版で存在感を増した人物がいます。

それがテルです。

テルちゃんの声優は花澤香菜

テルはリンと同じ遊郭で働いている九州出身の女性です。

公式作品紹介によると、若い水兵と一緒に川へ飛び込み、助けられたものの、その後に風邪をこじらせてしまうというエピソードが描かれます。

声を担当しているのは、人気声優の花澤香菜です。

2019年版では、すずとリンの関係だけでなく、遊郭で暮らす女性たちにもそれぞれの人生があることが伝わってきます。

テルという人物が加わったことで、遊郭が単なる物語上の舞台ではなく、さまざまな事情を抱えた人々が生活する場所として描かれるようになりました。

枕崎台風の追加シーンが示す戦後の現実

もう一つ注目したいのが、終戦後の枕崎台風です。

枕崎台風は1945年9月17日に日本を襲った大型台風で、終戦から間もない時期に大きな被害をもたらしました。

2019年版では、この災害に関するエピソードが追加されています。

興味深いのは、この場面が単に史実を補足するためだけに追加されたわけではないことです。

片渕監督はMOVIE WALKER PRESSのインタビューで、枕崎台風のエピソードは2016年版の原型となる絵コンテにも存在していたと説明しています。

その後、2018年に呉で発生した水害などを目の当たりにし、75年前の災害を現代にもつながる出来事として捉え直したといいます。

この追加によって、物語の時間的な広がりも変わりました。

戦争が終われば、すべての苦しみが終わるわけではありません。

戦後にも自然災害があり、生活を失う人がいて、それでも生きていかなければならない人々がいます。

2019年版は、戦争の終結を物語のすべての終わりとして扱わず、その後も続いていく人生を描いているのです。

【原作漫画との違い】こうの史代の描いた世界はどう映像化された?

原作漫画は、こうの史代によって2007年から2009年まで双葉社の「漫画アクション」で連載されました。単行本は上・中・下巻の全3巻です。

映画化にあたっては、長い原作を劇場用アニメーションとして再構成する必要がありました。

そのため、2016年版ではエピソードの取捨選択が行われています。

原作で重要だったリンの物語が2016年版では大幅に省略

原作漫画では、すずとリンの交流が物語の重要な要素として描かれています。

周作とリンの過去も、すずが自分の存在価値について考えるきっかけになっています。

ところが2016年版では、上映時間の制約などから、この部分が大幅に省略されました。

その代わり、すずと径子の関係を中心に物語を組み立てることで、一本の映画としてのまとまりを実現しています。

2019年版は、原作に存在したリンの物語を取り戻すだけでなく、原作漫画にはない場面も追加しています。

つまり、原作の完全な映像化でも、原作をそのまま再現した作品でもありません。

右手を失ったすずと漫画ならではの表現

原作漫画と映画を比較する際、ぜひ注目してほしいのが、すずが右手を失う場面です。

すずにとって右手は、絵を描くための大切な存在でした。

右手を失った後、原作漫画では背景の線の描き方が変化します。

これは作者のこうの史代自身が、すずの精神状態を表現するために左手で背景を描いたことによるものです。

読者は絵の違和感を通じて、すずが感じている世界の変化を体験します。

映画でも、左手で描いた絵を使用するなど、アニメーションならではの表現によってこの心理描写を再現しています。

このように、こうの史代の原作は単に戦争中の生活を描いた漫画ではありません。

絵を描くという行為そのものが、すずの感情や世界の見え方と深く結びついています。

片渕監督の映画化は、こうした漫画独自の表現を映像へ置き換える試みでもあったのです。

【制作経緯と2019年版の評価】片渕須直監督が新作として作り直した理由

2019年版が誕生した背景には、2016年版の制作段階から続いていた片渕須直監督の構想があります。

当初、監督はこうの史代の原作漫画をできるだけ映像化したいと考えていました。

しかし、原作の全エピソードを盛り込むと長大な作品になってしまいます。

J-WAVEのインタビューで監督は、劇場用の約2時間の映画として成立させるため、リンやテルの物語を十分に描かない選択をしたと説明しています。

その後、2016年版が大きな支持を集めたこともあり、追加エピソードを含む新しい作品の制作へと進みました。

2016年版の大ヒットが新作制作の土台に

2016年版は2016年11月12日に公開され、口コミを通じて観客を増やしていきました。

文化庁メディア芸術カレントコンテンツの記事では、興行収入は約27億円、観客動員数は210万人を突破したと紹介されています。

制作や宣伝の一部にはクラウドファンディングも活用され、3,000人を超える支援者から約4,000万円が集まりました。

この作品は、公開直後の大規模な宣伝だけで成功した映画ではありません。

観客が作品を鑑賞し、その感想が口コミとして広がることで、長期間にわたる上映につながりました。

2019年版の評価と評判は?

2019年版も公開当初から高い評価を集めています。

2019年12月の公開時には、次のような満足度調査で上位を獲得しました。

- ぴあ映画初日満足度ランキング:第1位、95.3点
- Filmarks初日満足度ランキング:第1位、平均4.48点(5点満点)

Filmarksの数字は公開直後のレビュー372件を集計した当時のデータです。2026年現在の固定評価として扱うものではありません。

当時の評価で特に目立ったのは、追加シーンによって登場人物の気持ちが理解しやすくなったという点です。

前作では分からなかった人物の事情が明らかになり、夫婦関係や女性同士の交流に深みが生まれたことが支持されました。

一方、上映時間が168分と長いため、短時間で作品を楽しみたい人には負担になる可能性もあります。

2016年版と2019年版、どちらを見るべき?

おすすめの鑑賞方法は、目的によって異なります。

2016年版がおすすめの人

- すずの日常を中心に物語をシンプルに楽しみたい
- まずは作品の基本的な世界観を知りたい
- 129分という比較的コンパクトな上映時間で鑑賞したい

2019年版がおすすめの人

- 白木リンと周作の関係を詳しく知りたい
- すずの内面や女性としての葛藤を深く理解したい
- テルや枕崎台風などの追加エピソードを見たい
- 原作漫画との違いを比較しながら鑑賞したい

個人的に作品を深く理解するうえで最もおすすめしたいのは、2016年版を見てから2019年版を見る順番です。

最初に2016年版で物語の基本的な印象をつかみ、その後2019年版を鑑賞すると、同じ人物や出来事の意味が変化して見える面白さを味わえます。

【この世界の片隅にさらにいくつもの違い】に関するよくある質問(FAQ)

Q1:2016年版と2019年版の上映時間はそれぞれ何分ですか?

A1:2016年版『この世界の片隅に』は129分、2019年版『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』は168分です。2019年版は約39分長く、250カット以上の新規シーンが追加されています。

Q2:白木リンと北條周作は過去に付き合っていたのですか?

A2:二人には、周作がすずと結婚する前の親密な関係があったことが示されています。原作漫画では周作がリンのもとを訪れていた過去が描かれています。ただし、二人の関係の詳細は直接的な説明だけでなく、物語の断片から読み取る構成になっています。

Q3:テルちゃんの声優は誰ですか?

A3:テルの声を担当しているのは花澤香菜です。テルはリンと同じ遊郭で働く九州出身の女性で、2019年版で描写が加わった登場人物です。

Q4:枕崎台風のエピソードは原作漫画にもありますか?

A4:2019年版で追加された枕崎台風の描写は、2016年版の原型となる絵コンテにも存在していたエピソードです。片渕監督は2018年の呉の水害などを受け、戦後の災害を改めて捉え直して作品に反映しました。

Q5:2019年版は2016年版の続編ですか?

A5:続編ではありません。2016年版の映像を土台に250カット以上の新しい場面を追加し、物語全体を再構成した作品です。片渕監督自身も単なる長尺版ではなく、新しい映画として制作したことを説明しています。

まとめ:【プロの結論】2019年版はすずの知られざる内面を映し出したもう一つの名作

『この世界の片隅に』と『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』の違いは、上映時間や追加カットの数だけではありません。

2016年版がすずの日常と北條家の人間関係を中心に描いた作品だったのに対し、2019年版は白木リン、テル、周作など、すずの人生に関わるさまざまな人々の視点を加えています。

特にリンとの交流は、すずの人物像を大きく変える重要な要素です。

誰かの妻として生きるすずだけでなく、絵を描くことが好きな一人の女性としてのすず。嫉妬し、悩み、自分の価値を見失いながらも、それでも生きようとする姿が描かれています。

さらに枕崎台風のエピソードによって、戦争が終わった後にも人々の人生は続いていくという視点が加わりました。

2016年版は、すずが戦時下をどう生きたのかを描いた映画。2019年版は、そのすずがどのような思いを抱え、誰と出会い、どう自分の居場所を見つけていくのかを描いた映画です。

2026年に両作品を見比べるなら、ぜひ2019年版のリンとの会話や、周作との過去を知ったすずの表情に注目してください。

同じ物語でありながら、登場人物の見え方が変わる。その変化こそが、『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』という作品が持つ最大の魅力です。

主な参考資料・事実確認資料

- 文化庁メディア芸術カレントコンテンツ:作品比較、上映時間、原作との表現上の違い。
- 映画公式サイト・GENCO作品情報:登場人物、キャスト、あらすじ、追加エピソード。
- 朝日新聞GLOBE+:片渕監督の制作意図と、すず・リン・周作の関係。
- J-WAVE:リンとテルの追加理由、すずの心理描写に関する監督インタビュー。
- MOVIE WALKER PRESS:枕崎台風の制作背景と監督インタビュー。
- ぴあ・Filmarks:2019年公開時の初日満足度調査。

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安曇 春香
トレンドリサーチャー 安曇 春香
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