兵庫県の赤穂市民病院で発生した医療事故と、インターネット上で大きな反響を呼んだ漫画『脳外科医 竹田くん』。この2つは、2019年から2020年にかけて同病院の脳神経外科で相次いだ医療事故を共通の背景としている。特に、2020年1月22日の腰椎手術で患者の馬尾神経が切断され、両下肢の麻痺など重い後遺障害が残った事故は、民事・刑事の両面で司法判断が示された重要な事案だ。
2026年11月現在、元執刀医の松井宏樹氏には禁錮1年、執行猶予3年の有罪判決が2026年3月27日に確定している。また、赤穂市と元執刀医に対する約8900万円の損害賠償命令も2025年6月に確定した。一方、漫画をめぐって元医師が作者らを刑事告訴した件では、2026年2月20日付で不起訴処分となっている。実際の医療事故と漫画の表現には、どのような関係があるのだろうか。
【関係を解説】赤穂市民病院の医療事故と「脳外科医 竹田くん」は何が同じなのか
実際の医療事故を題材にしたウェブ漫画
『脳外科医 竹田くん』は、2023年1月から7月にかけてインターネット上で公開されたウェブ漫画である。
物語の舞台は「赤池市」という架空の町にある市民病院。主人公の竹田は、脳神経外科医として勤務する一方、手術で重大な医療事故を繰り返す人物として描かれる。加えて、上級医による指導、病院長の管理責任、医療安全部門の対応など、個人の技術だけでは説明できない組織上の問題も作品の重要なテーマになっている。
漫画が注目された理由は、単に医師の失敗を描いたからではない。複数の医療事故が起きたにもかかわらず、病院組織が適切に対応できなかったという構図が、実際の赤穂市民病院の問題と重なっていたためだ。
作者が2025年2月に被害患者の親族であることを公表
2025年2月5日、漫画作者は自身のブログで声明を発表した。
その中で作者は、赤穂市民病院の脳神経外科で2019年から2020年にかけて発生した医療事故のうち、2020年1月22日の医療過誤で重い後遺障害を負った患者の親族であることを明らかにした。
作者によると、当事者や関係者から直接・間接的に得た情報、報道資料、裁判資料、公的資料などを参考に作品を制作したという。手術に立ち会った医療従事者を含む関係者への聞き取りも行ったと説明している。
ただし、作者自身も作品はフィクションであると明言している。実際の事故や病院内の問題を題材としながら、架空の町や人物を設定し、物語を理解しやすくするための単純化や比喩的表現を取り入れた作品だ。
松井宏樹元医師と主人公・竹田のモデル関係
報道では、松井宏樹元医師が主人公・竹田のモデルとされる人物として取り上げられている。
松井氏は2019年7月に赤穂市民病院の脳神経外科に着任し、複数の医療事故に関与したと報じられた元執刀医である。2020年1月22日の腰椎手術をめぐっては、民事訴訟と刑事裁判の双方で責任が問われた。
ただし、漫画の主人公と現実の医師を完全に同一視することには注意が必要だ。作品には架空の人物、架空の病院、風刺的な展開が含まれており、個々の登場人物と実在の関係者との対応関係がすべて公的に確定しているわけではない。
重要なのは、漫画が実在の医師の人物評そのものではなく、医療事故の発生と病院の安全管理、組織的な監督責任という社会的問題を描いた作品である点だ。
【事故の全貌】2020年1月22日の腰椎手術で何が起きたのか
患者が受けたのは腰部脊柱管狭窄症の手術
問題となったのは、腰部脊柱管狭窄症と診断された女性患者に対する腰椎後方除圧術だった。
この手術は、腰椎の一部を切除して脊柱管を広げ、神経への圧迫を取り除くことを目的とする。2020年1月22日、赤穂市民病院で松井宏樹医師が執刀し、脳神経外科の指導的立場にあったD医師が助手を務めた。
裁判所の民事判決によると、松井医師は腰椎の骨を切除する際、出血などによって手術部位の視認性が十分に確保されていない状態だったにもかかわらず、こまめな止血を行わずに骨の切除を続けた。
その結果、医療用ドリルが硬膜に接触して損傷させ、逸脱した馬尾神経を巻き込んで複数本を切断したと認定された。
患者に残ったのは両下肢の麻痺と重い神経障害
事故によって患者は、両下肢に重度の麻痺が生じ、自力で立ち上がることも歩くこともできない状態となった。
加えて、膀胱や直腸の機能にも重大な障害が残り、排尿には間欠的な導尿が必要となった。腰から両下肢にかけて強い神経障害性疼痛も続き、症状が特に重いときには耐え難い痛みを伴う状態だった。
裁判所は後遺障害について、自動車損害賠償保障法施行令の別表第一第1級1号に相当する重い障害であると認定した。
同判決によれば、症状固定日は2020年10月23日。手術から約9か月後も神経障害の回復は極めて厳しいと判断されていた。
執刀医には脊椎手術の経験がどれほどあったのか
民事判決では、松井医師が本件病院に着任する以前、脊椎手術に助手として約100例関与していた一方、脊椎手術の執刀医を務めたのは今回が初めてだったことも認定されている。
この事実は、経験の浅い医師にどのような手術を任せるべきか、また、指導医がどの段階で執刀を交代すべきかという問題につながる。
ただし、裁判所は、過去の医療事故が複数あったことだけで、松井医師に手術を担当させるべきではないほどの技量不足があったとまでは認定していない。
一方で、今回の手術における注意義務違反については、その程度が著しいと判断した。技量の評価と、個別の手術における過失の評価は、分けて理解する必要がある。
【2019年〜2026年の時系列】医療事故8件から有罪判決確定まで
赤穂市民病院の問題を理解するには、2020年1月22日の手術だけでなく、その前後に発生した医療事故と病院側の対応を追う必要がある。
特に注意したいのが「8件」と「11件」という数字だ。最初に問題となった8件と、その後に追加された3件を合わせ、病院の検証対象は計11事例に広がった。
主要な出来事を時系列で整理
| 時期・年月日 | 出来事 | 確認された内容 |
|---|---|---|
| 2019年7月 | 松井医師が着任 | 赤穂市民病院の脳神経外科に勤務開始 |
| 2019年9月〜2020年2月 | 医療事故が相次ぐ | 最初に検証対象となった8事例に関係する事故が発生 |
| 2020年1月22日 | 腰椎手術で神経損傷 | 馬尾神経が切断され、患者に重度の後遺障害が残る |
| 2020年2月〜3月 | 手術中止の指示 | 病院側が医師の手術を禁止する措置を実施 |
| 2021年8月 | 松井医師が退職 | 依願退職 |
| 2021年12月〜2022年3月 | 事故の公表と追加調査 | 当初の8件に加えて3件が判明し、計11事例が検証対象に |
| 2022年8月19日 | 学会の認定停止 | 日本脳神経外科学会が専門医指定訓練施設の認定を停止 |
| 2023年3月30日 | ガバナンス検証報告書 | 病院の医療安全管理体制について提言 |
| 2025年4月1日 | 専門医訓練施設に復帰 | 日本脳神経外科学会の認定停止が解除 |
| 2025年5月14日 | 民事訴訟の判決 | 約8888万6851円の損害賠償を命令 |
| 2025年6月2日 | 民事判決確定 | 原告・被告双方が控訴せず確定 |
| 2026年2月20日 | 漫画をめぐる不起訴 | 作者らに対する刑事告訴について不起訴処分 |
| 2026年3月12日 | 刑事裁判の判決 | 元執刀医に禁錮1年、執行猶予3年 |
| 2026年3月27日 | 刑事判決確定 | 検察・被告双方が控訴せず有罪判決が確定 |
医療事故8件は、すべて医療過誤だったのか
ここは誤解が生じやすい部分だ。
赤穂市民病院が2021年12月に公表した説明では、最初に問題となった8件のうち、病院が医療過誤と認めたのは2020年1月22日の腰椎手術の1件だった。ほかの7件については、外部有識者の検証などを踏まえ、医師の過失による医療過誤ではないとの認識を示していた。
その後、2022年3月には新たに3件が判明し、事故の検証対象は計11件となった。
つまり、8件という数字は同一医師が関与した医療事故の当初の報告件数であり、8件すべてについて医師の過失が司法判断で認定されたという意味ではない。
また、2024年8月の赤穂民報の報道では、病院内部の医療安全推進室が8件のうち6件で外部専門家による検証の必要性を指摘していた一方、実際に外部検証が行われたのは3件だったとされた。事故の評価や検証方法そのものにも問題が残されていたことがうかがえる。
【民事・刑事の司法判断】約8900万円の賠償と禁錮1年の有罪判決
2025年5月14日、神戸地裁姫路支部が賠償命令
患者と家族は、赤穂市と松井元医師に対し、損害賠償を求める民事訴訟を起こしていた。
2025年5月14日、神戸地方裁判所姫路支部は、執刀医の注意義務違反を認め、赤穂市と元執刀医に対して連帯して賠償金を支払うよう命じた。
判決の主文で示された金額は次のとおり。
- 患者本人への賠償:8668万6851円
- 患者の長女への賠償:220万円
- 合計:8888万6851円
加えて、2020年1月22日から支払い済みまで年5%の割合による金員の支払いも命じられた。
判決では、出血によって十分な視認性を確保できていない状況で骨の切除を進めたことについて、執刀医の注意義務違反は著しいと評価された。
病院側についても、事故後の説明や情報開示が迅速かつ十分だったとは評価できないと指摘された。
約8900万円の賠償命令は確定している
赤穂市は2025年5月20日、控訴しない方針を発表した。松井元医師と原告側も控訴しない意向を示し、同年6月2日までに判決が確定した。
したがって、約8900万円という賠償額は、単なる一審判決の段階にとどまらない。双方が控訴しなかったことで確定した司法判断である。
2026年3月12日、業務上過失傷害罪で有罪判決
刑事事件についても、2026年に大きな進展があった。
松井元医師は、2020年1月22日の手術で十分な止血を行わず、視認性が確保されない状態で医療用ドリルを使用し、患者の神経を切断して重い傷害を負わせたとして、業務上過失傷害罪に問われた。
2026年2月9日の初公判では起訴内容を認め、弁護側は一人の医師だけに責任を負わせることへの疑問を主張した。手術は複数の医師が関与するものであり、指導医による適切な補助や交代も必要だったという立場だった。
しかし、2026年3月12日、神戸地裁姫路支部は松井元医師に禁錮1年、執行猶予3年の有罪判決を言い渡した。求刑は禁錮1年6月だった。
その後、3月26日の控訴期限までに検察・被告の双方から控訴の申し立てはなく、2026年3月27日に有罪判決が確定した。
なお、この刑事判決が対象としているのは2020年1月22日の腰椎手術に関する業務上過失傷害事件であり、過去の8件や11件すべてについて刑事責任が認定されたわけではない。
【漫画作者への名誉毀損告訴】2026年2月の不起訴処分とは
松井元医師が漫画作者らを刑事告訴
『脳外科医 竹田くん』をめぐっては、元執刀医側が漫画の表現に法的措置を取ったことも注目された。
赤穂民報の2026年3月2日の報道によると、松井元医師は2025年7月、漫画作者、被害患者の長女、赤穂市民病院に在籍していた当時の上司を刑事告訴した。
告訴の内容は、漫画による名誉毀損や信用毀損などだった。
これに対し、神戸地方検察庁姫路支部は2026年2月20日付で、告訴された3人全員について不起訴処分とした。
不起訴は漫画の全内容が裁判で認定されたという意味ではない
ここで押さえておきたいのが、不起訴処分の意味である。
不起訴とは、検察が刑事裁判にかけるための起訴をしないと決定したことを指す。刑事裁判で無罪判決が出たこととは異なる。
また、不起訴処分だけで漫画の全エピソードが事実だと司法判断されたわけでもない。逆に、告訴されたこと自体をもって漫画の内容が虚偽と確定したわけでもない。
不起訴の具体的な理由について、報道された情報からは詳細な判断内容までは確認できない。
漫画と実際の医療事故を比較するときの注意点
漫画と現実の関係を理解するためには、次の3点を区別する必要がある。
- 実際に起きたこと:赤穂市民病院で2019年から2020年にかけて医療事故が複数発生し、2020年1月22日の手術では神経損傷による重度の後遺障害が生じた。
- 漫画で描かれたこと:架空の市民病院と医師を通して、医療事故の連続、上級医の監督、病院組織の問題などを風刺的に表現した。
- 司法判断で確定したこと:特定の腰椎手術について民事上の賠償責任と刑事上の業務上過失傷害罪が認められた。
この3つは関連しているが、同じものではない。
漫画を読むことで医療安全や病院組織の問題を考えることはできる。しかし、漫画の演出や登場人物の行動を、そのまま実在する医師や職員の事実として扱うことは適切ではない。
【2026年11月最新】赤穂市民病院の医療安全体制と再発防止策
2023年3月のガバナンス検証委員会報告書
一連の医療事故を受け、赤穂市民病院は2022年6月にガバナンス検証委員会を設置した。
同委員会は職員への聞き取りなどを実施し、2023年3月30日に報告書を提出した。
報告書で特に問題視されたのは、医療安全のための組織やマニュアルが存在していたにもかかわらず、それらが実際の現場で十分に機能していなかったことだ。
具体的には、次のような課題が指摘された。
- 医療安全推進室、医療安全推進委員会、院内事故調査委員会の役割や責任の所在が不明確だった。
- 医療事故と合併症の区別について、診療科と病院側の認識が一致していなかった。
- 医療事故の報告や検証に関する院内の共通理解が不足していた。
- 医師の手術中止に関する重要な指示が口頭で伝えられ、職員によって受け止め方に差があった。
- 採用時の評価や、経験に応じた医師への指導体制に改善の余地があった。
報告書が示した問題は、単純な個人の技術不足だけでは説明できない。安全管理を担当する部署があっても、危険を察知した情報を組織全体で共有し、実際の行動に結びつけられなければ事故を防げないという構造的な問題だった。
日本脳神経外科学会による専門医訓練施設の認定停止
2022年8月19日、日本脳神経外科学会は赤穂市民病院に対し、専門医指定訓練施設の認定停止を通告した。
理由は、医療安全管理体制や医療安全教育上の懸念だった。
認定停止は期限を設けない措置であり、病院には医療安全体制の整備と一連の医療事故の問題点の総括が求められた。
その後、2025年4月1日付で認定停止が解除された。約2年7か月ぶりの復帰である。
日本脳神経外科学会は、ガバナンス検証委員会の報告書や改訂された医療安全管理指針・マニュアルなどを確認したうえで、今後の研修施設報告に医療安全管理体制の実績や専攻医への具体的な指導内容を含めることなどを条件として再認定を認めた。
ただし、専門医訓練施設への復帰は、過去の事故のすべての原因が医学的に解明されたことを意味するものではない。学会の認定条件と、個別事故の原因究明は区別して考える必要がある。
2025年3月改訂の医療安全管理指針
赤穂市民病院は2025年3月に医療安全管理指針を改訂した。
現在の公式指針では、医療安全推進室による情報収集・分析・改善提案、医療安全推進委員会による対策の企画・検討、各部門のリスク管理などが定められている。
また、報告された事例について改善策を作成するだけでなく、その実施状況や有効性を点検・評価し、必要に応じて見直す仕組みも明記されている。
全職員を対象とした医療安全研修は、計画的に年2回以上実施する方針だ。
事故が発生した場合には、救命措置を最優先とし、院長への報告、患者・家族への速やかな説明、診療録への記録などを行うことも規定されている。
2026年11月現在、何が変わり、何が課題なのか
2026年11月時点で確認できる主な進展は、次のとおりだ。
- 2023年3月:ガバナンス検証委員会の報告書が提出された。
- 2025年3月:医療安全管理指針が改訂された。
- 2025年4月:日本脳神経外科学会の専門医訓練施設として再認定された。
- 2025年6月:民事訴訟の賠償命令が確定した。
- 2026年3月:元執刀医の刑事有罪判決が確定した。
病院の公式ウェブサイトでは、2025年10月から2026年3月までの医療事故報告なども公開対象として掲載されており、事故情報を公表する仕組みが継続されている。
一方で、制度やマニュアルを整備したことと、現場で安全管理が実際に機能していることは別問題だ。今後も、事故報告の適正性、外部専門家による検証、医師の指導体制、患者・家族への説明が継続的に実行されているかが問われる。
再発防止を評価するうえでは、制度の存在だけでなく、危険を察知した職員が上司や医療安全部門に報告できる環境があるか、報告を受けた管理者が執刀の中止や交代など必要な判断を迅速に行えるかが重要になる。
【プロの結論】赤穂市民病院の問題から見える医療安全の本質
個人の過失だけでは医療事故の再発を防げない
赤穂市民病院の一連の問題から読み取れる最大の教訓は、重大な医療事故を一人の医師の責任だけに集約しても、同じ問題の再発防止には不十分だということだ。
もちろん、執刀医には患者の安全を守る注意義務がある。今回の刑事判決では、視認性が確保されていない状態で手術を続けたことについて、業務上過失傷害罪が成立した。
しかし、手術は個人だけで完結するものではない。執刀医、助手、指導医、看護師、医療安全管理者、病院長など、それぞれが役割を果たす必要がある。
医師の経験や技量に応じた手術の割り当て、執刀中の危険を察知した場合の中止判断、事故後の報告と外部検証。これらの仕組みが連動して初めて、組織として患者の安全を守ることができる。
医療事故と医療過誤を混同しないことも重要
医療事故という言葉は、必ずしも医療従事者の過失を意味しない。
赤穂市民病院の医療安全管理指針でも、医療事故は過失の有無を問わず発生した望ましくない事象として定義されている。一方、医療過誤は医療従事者や医療機関の過失によって起きたものとされる。
この区別を理解していないと、8件の医療事故がすべて過失と認定されたかのような誤解が生じる。
事実を正確に理解するには、事故の発生件数、病院による判断、外部検証の結果、民事裁判の認定、刑事裁判の認定をそれぞれ分けて確認することが必要だ。
患者や家族が医療機関の安全性を見極める判断基準
今回の問題から、医療機関の安全管理を考える際に注目したい要点は4つある。
- 説明の透明性:治療内容やリスク、事故が起きた場合の対応について、患者や家族に十分な説明が行われているか。
- 相談体制:主治医以外にも医療安全部門や患者相談窓口に相談できる仕組みがあるか。
- チーム医療:医師の経験に応じた指導や、複数の医療従事者による確認が行われているか。
- 事故後の対応:問題が発生した際に、原因究明、外部検証、再発防止策の公表が行われるか。
これらは特定の病院だけに当てはまる条件ではない。高度な手術を受ける場合にも、患者と医療機関の間で安全性や治療方針について理解を共有するための基本的な判断材料となる。
【赤穂市民病院の医療事故と竹田くん】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:脳外科医・竹田くんのモデルは松井宏樹医師ですか?
A1:報道では松井宏樹元医師が主人公のモデルとされる人物として取り上げられている。漫画作者も赤穂市民病院の医療事故を作品のモチーフにしたと公表している。ただし、作品はフィクションであり、すべての登場人物と実在人物が一対一で対応するわけではない。
Q2:赤穂市民病院の医療事故8件はすべて医療過誤だったのですか?
A2:いいえ。病院は当初の8件について、2020年1月22日の腰椎手術の1件を医療過誤と認め、ほかの7件については医療過誤ではないとの判断を示していた。その後、3件が追加され、計11事例が検証対象となった。
Q3:松井宏樹元医師の有罪判決は確定していますか?
A3:確定している。2026年3月12日に神戸地裁姫路支部が禁錮1年、執行猶予3年を言い渡し、3月26日の控訴期限までに双方から控訴がなかったため、3月27日に確定した。
Q4:約8900万円の損害賠償命令は確定していますか?
A4:確定している。2025年5月14日に神戸地裁姫路支部が合計8888万6851円の支払いを命じ、原告・被告双方が控訴しなかったため、同年6月2日までに確定した。
Q5:漫画作者への名誉毀損告訴はどうなりましたか?
A5:松井元医師が漫画作者ら3人を刑事告訴した件について、神戸地検姫路支部は2026年2月20日付で不起訴処分とした。これは刑事裁判での無罪判決とは異なり、漫画の全内容について司法判断が示されたという意味でもない。
Q6:赤穂市民病院は2026年現在も専門医の研修施設として認定されていますか?
A6:日本脳神経外科学会による認定停止は2025年4月1日に解除され、専門医指定訓練施設に復帰している。ただし、医療安全活動の実績や専攻医への具体的な指導内容を継続的に報告することなどが条件となっている。
まとめ:赤穂市民病院医療事故の現在と今後の課題
赤穂市民病院の医療事故問題は、2020年1月22日の腰椎手術で起きた神経損傷を中心に、医師個人の注意義務、病院の監督責任、医療安全管理体制、事故後の説明責任など、多くの問題を浮き彫りにした。
2026年11月現在、民事訴訟では約8888万6851円の賠償命令が確定し、刑事事件では元執刀医に対する禁錮1年・執行猶予3年の有罪判決が確定している。漫画『脳外科医 竹田くん』の作者らに対する名誉毀損などの刑事告訴も不起訴となった。
また、病院はガバナンス検証委員会の報告を受けて医療安全管理指針を改訂し、日本脳神経外科学会の専門医訓練施設にも復帰した。
しかし、本当に重要なのは、こうした制度変更や司法判断を今後の医療現場にどう生かすかという点だ。
医療事故を防ぐためには、個々の医師の注意だけでなく、組織全体が危険を察知し、必要なときに手術を止め、問題を隠さず検証し、患者と家族に誠実に説明する仕組みが欠かせない。
『脳外科医 竹田くん』が社会に投げかけた問いも、まさにそこにある。赤穂市民病院の今後を評価する際には、認定復帰やマニュアル改訂という形式的な成果だけでなく、医療安全が日々の診療で実際に機能しているかを見続ける必要がある。
主な根拠資料
- 神戸地方裁判所姫路支部の2025年5月14日民事判決。
- 赤穂市民病院ガバナンス検証委員会の2023年3月報告書。
- 赤穂市民病院の医療安全管理指針(2025年3月改訂)。
- 2026年3月の刑事判決と確定報道。
- 漫画作者の声明と2026年3月の不起訴報道。
- 日本脳神経外科学会の専門医訓練施設認定復帰に関する報道。