コンカフェの経営者が理解しておかなければならないのは、飲食店としての営業許可と、風営法上の風俗営業許可は別制度だという点である。
風俗営業許可はどのように取得する?
風営法第3条では、風俗営業を営もうとする場合、営業所ごとに所在地を管轄する都道府県公安委員会の許可を受ける必要があると定めている。
歌舞伎町であれば、東京都公安委員会が許可の主体となる。
許可を受ける際には、主に次のような点が審査対象になる。
- 営業者の適格性: 法律で定められた欠格事由に該当しないこと。
- 営業所の所在地: 営業禁止区域などの規制に適合していること。
- 店舗の構造・設備: 法令で定められた構造や設備の基準を満たすこと。
- 営業管理体制: 管理者や従業員の管理など、法令上の要件を満たすこと。
また、風俗営業許可は店舗単位で必要になる。別の場所に新店舗を出す場合、既存店の許可をそのまま使い回すことはできない。
ここで注意したいのが、飲食店営業許可との違いだ。
食品衛生法に基づく飲食店営業許可を取得していても、それだけで接待営業が認められるわけではない。
通常の飲食店として営業するための許可と、客への接待を伴う風俗営業の許可は、それぞれ異なる法的な手続きである。
深夜に酒類を提供する飲食店についても、営業形態に応じた届出などが必要になる場合がある。
従業員名簿の備え付け義務とは?
2026年7月の一斉立ち入りで特に注目されたのが、従業員名簿の不備だった。
風営法第36条では、対象となる営業者に対して、営業所ごとに従業員名簿を備え付けることを義務付けている。
これは単なる社内管理用の書類ではない。
従業員の氏名や住所など、法令で定められた事項を記録し、営業に関わる人員を適切に管理するための制度だ。
警察庁の解釈運用基準では、雇用契約を結んだ従業員だけでなく、業務委託によって営業に関わるスタッフも名簿への記載対象になり得るとされている。
加えて、接客業務に従事する人については、生年月日や国籍などを確認する義務も定められている。
つまり、キャストをアルバイトとして採用しているのか、業務委託として契約しているのかという形式だけで、管理義務を免れることはできない。
未成年者の雇用・入店に関する規制
メンズコンカフェをめぐって特に注意が必要なのが、18歳未満の従業員と来店客の管理だ。
風営法第22条では、風俗営業について次のような禁止事項を定めている。
- 18歳未満の者に客への接待をさせること。
- 18歳未満の者を午後10時から翌朝6時まで客に接する業務に従事させること。
- 18歳未満の者を営業所に客として立ち入らせること。
- 20歳未満の者に酒類やたばこを提供すること。
また、第18条では、対象となる営業所の入口に18歳未満の立ち入りを禁止する表示を設置する義務を定めている。
ここで重要なのは、18歳未満の従業員について、単に雇用していることと、接待業務に従事させていることを区別することだ。
例えば、18歳未満の人を雇用していても、その仕事内容や勤務時間によって法的な判断は異なる。一方、18歳未満の人に接待をさせることは認められない。
2024年7月の歌舞伎町の摘発で17歳の従業員がいたことが報じられたのも、こうした年少者管理の問題と重なる。
【2026年後半の取り締まり】改正風営法で今後何が変わる?

2026年の歌舞伎町コンカフェ規制を考えるうえで、見逃せないのが2025年に施行された改正風営法だ。
この改正は、悪質なホストクラブなどで問題になった高額請求や、客の恋愛感情につけ込んだ営業手法への対策を目的としている。
2025年6月28日施行の改正風営法
警察庁の通達や各都道府県警察の公表資料によると、2025年6月28日から主な改正規定が施行された。
特に注目される変更は次の3点だ。
1. 不適切な接客・料金請求への規制強化
接待飲食営業について、料金の虚偽説明、客の恋愛感情につけ込んだ飲食の要求、注文していない飲食物の提供などが新たな遵守事項として明確化された。
2. 客への威迫や売春などの要求を禁止
料金を支払わせる目的で客を威迫する行為や、料金の支払いのために売春、性風俗店勤務、AV出演などを要求する行為が禁止された。
3. 無許可営業に対する罰則の引き上げ
無許可で風俗営業を営んだ場合の罰則が強化された。
| 項目 | 改正前 | 改正後 |
|---|---|---|
| 個人への拘禁刑 | 2年以下 | 5年以下 |
| 個人への罰金 | 200万円以下 | 1,000万円以下 |
| 法人への罰金 | 200万円以下 | 3億円以下 |
加えて、2025年11月28日には風俗営業許可の欠格事由も追加された。
警察による立ち入り検査後に許可証を返納して処分を逃れようとした者などについて、許可を受けられない場合がある。
こうした改正によって、2026年は無許可営業を続ける経営者にとって、法的なリスクが従来より大きくなっている。
2026年9月以降は歌舞伎町全体の警戒体制も強化
2026年秋には、コンカフェだけでなく歌舞伎町全体を対象とする警察活動にも動きがあった。
TBS NEWS DIGやテレビ朝日の報道によると、警視庁新宿署は2026年9月に「歌舞伎町浄化対策ユニット」を設置した。
専従の警察官によるパトロールを行い、10月20日には約50人の警察官が参加する一斉パトロールも実施された。
取り締まりの対象には、違法な客引き、未成年者の路上飲酒、売春目的の客待ちなどが含まれる。パトロールでは飲酒していた未成年者2人が補導された。
この活動はメンズコンカフェ20店舗への立ち入りとは別の取り組みだが、歌舞伎町の青少年保護と違法営業対策が継続的に強化されていることを示している。
今後、警視庁が注目すると考えられる5つのポイント
2026年の動きを踏まえると、今後の取り締まりでは次のような点が焦点になる。
1. 接待営業の実態: カウンター越しであっても、特定客への継続的な接客が行われていないか。
2. 営業許可の適正性: 飲食店営業許可だけで、実質的な接待営業を行っていないか。
3. 従業員管理: 名簿の備え付けや年齢確認が適切に行われているか。
4. 未成年者の保護: 18歳未満の接待業務や不適切な深夜勤務、未成年者への酒類提供がないか。
5. 高額請求・依存的な営業: 客の恋愛感情や経済的な弱みにつけ込んで、支払いを強要するような営業がないか。
特に5番目については、単に料金が高いというだけで直ちに違法になるわけではない。問題となるのは、料金の虚偽説明や、客の好意を利用した不当な飲食要求、威迫など、法律が禁止する行為に該当するかどうかだ。
【プロの結論】摘発を左右するのは店舗の名称ではなく営業実態
歌舞伎町のメンズコンカフェ摘発から読み取れる本質は、コンセプトカフェという業態そのものが規制されているわけではないということだ。
キャラクター性や世界観を大切にした接客、衣装を使った演出、ファンとの交流は、それだけで違法になるものではない。
しかし、特定客への継続的な接待を提供しながら、飲食店としての営業許可だけで運営していれば、無許可営業の問題が生じる。
経営者にとっては、開業時の許可確認だけでなく、実際の接客方法、従業員の契約形態、名簿、年齢確認、料金表示まで継続的に管理することが欠かせない。
利用者側にとっても、店の名称やSNSでの宣伝だけで安全性を判断しないことが大切だ。
【歌舞伎町のコンカフェ摘発】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:2026年7月に摘発されたメンズコンカフェ20店舗は、すべて営業停止になった?
A1:そのような発表は確認されていない。7月22~23日の調査では20店舗に立ち入り、12店舗で風営法上の違反が確認された。報道された措置はチラシの配布や注意喚起、口頭指導であり、20店舗すべてが営業停止になったわけではない。
Q2:コンカフェでキャストと会話するだけでも風営法違反になる?
A2:会話するだけで直ちに違法になるわけではない。一般的な挨拶や短い世間話は通常、接待には該当しない。一方、特定の客の相手を継続して行う場合は、接待と判断される可能性がある。実際の営業形態によって判断される。
Q3:メンズコンカフェで18歳未満のキャストを雇うことはできる?
A3:雇用そのものと接待業務への従事は区別される。風俗営業では18歳未満の者に接待をさせることは禁止されている。また、午後10時から翌朝6時までの客に接する業務への従事も禁止されている。20歳未満への酒類提供も認められない。
Q4:飲食店営業許可を持っていればコンカフェを営業できる?
A4:通常の飲食店として営業するための許可だけでは、接待営業は認められない。実際のサービスが風営法上の接待に該当する場合は、別途、風俗営業許可が必要になる。
まとめ:歌舞伎町コンカフェ摘発の今後と知っておきたい判断基準
2026年7月の警視庁によるメンズコンカフェ20店舗への初の一斉立ち入りは、歌舞伎町のコンカフェ業界にとって大きな転換点となった。
20店舗中12店舗、60%で風営法上の違反行為が確認されたという数字は、営業管理や従業員管理に課題が残っていることを示している。
一方で、今回の12店舗すべてが無許可営業だったわけではなく、一斉立ち入りそのものが一斉逮捕を意味するわけでもない。
過去の2024年の逮捕事件、2025年の改正風営法、そして2026年秋の歌舞伎町全体の警戒強化を合わせて見ると、今後は無許可接待営業だけでなく、未成年者の保護、従業員管理、高額請求をめぐる問題にも監視の目が向けられると考えられる。
最も重要なのは、コンカフェという名称やカウンター営業という形式ではなく、実際にどのような接客を提供し、どのような管理体制で営業しているかという点だ。
歌舞伎町のコンカフェ業界が今後も健全に営業を続けられるかどうかは、法令遵守と利用者保護を両立できるかにかかっている。