2026年のNHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』で織田信長を演じた小栗旬。2014年のフジテレビ系ドラマ『信長協奏曲』でも信長役を務めた彼が、約12年の時を経て再び信長を演じたことは、大きな見どころの一つとなった。今回の信長は、圧倒的なカリスマ性だけでなく、孤独や葛藤、弟との悲しい過去を抱える人間として描かれている。
注目したいのは、制作統括が明かした小栗旬の起用理由、本人が語った役作り、そして仲野太賀・池松壮亮との共演によって生まれた新しい信長像だ。2026年11月3日時点の放送状況を踏まえ、2014年のドラマ、2016年の映画との違いや歴代の信長役も含めて整理する。
【2026年大河】小栗旬の織田信長はどんな人物?『豊臣兄弟!』での役柄を解説

『豊臣兄弟!』は、NHK大河ドラマ第65作。豊臣秀吉の弟であり、天下一の補佐役と称された豊臣秀長の生涯を、仲野太賀主演で描く戦国ドラマだ。
小栗旬が演じる織田信長は、主人公の小一郎(後の豊臣秀長)と、その兄・藤吉郎(後の豊臣秀吉)にとって絶対的な主君にあたる。
本作の信長は、単純な冷酷な天下人ではない。
孤高のカリスマに隠された孤独と悲しみ
小栗が2026年1月のTVガイドWebのインタビューで説明した信長像は、非常に合理的で先進的な考えを持ちながら、周囲に理解されない悲しみを抱えた人物だ。
加えて、信長自身が「信長としてこうあらねばならない」と自分を縛ってしまい、本来の自分とは異なる振る舞いをする場面もあるという。
この人物像には、小栗自身も共感する部分があると語っている。
特に重要なのが、弟・織田信勝との関係だ。
信長と信勝は、かつて仲の良い兄弟だった。しかし、家督をめぐる対立によって関係は崩れ、信長は最終的に弟を殺さざるを得なくなる。
この過去が信長の心に深い傷を残している。
豊臣兄弟と織田兄妹の対比が物語の鍵
『豊臣兄弟!』の構造を理解するうえで欠かせないのが、二組の兄弟関係だ。
- 織田兄妹:信長と妹・市(宮﨑あおい)
- 豊臣兄弟:秀吉(池松壮亮)と秀長(仲野太賀)
信長にとって、市は本音を見せられる数少ない存在として描かれる。
一方、小一郎と藤吉郎には、意見が異なっても互いを支え続ける兄弟の絆がある。
制作統括の松川博敬チーフプロデューサーは、こうした対比を作品の重要な構成要素として説明している。
また、本作では信長の妻・帰蝶を登場させない選択も取られた。これは織田兄妹の関係と信長の孤独を際立たせるための演出上の判断だ。
信長を中心に据えた英雄譚ではなく、豊臣兄弟の視点から信長という人物を見つめ直している点が、本作ならではの特徴である。
【起用理由】なぜ小栗旬が信長役に選ばれた?制作統括が明かした3つのポイント
小栗旬の信長役への起用は、単に知名度や過去の時代劇経験だけで決まったものではない。
2026年2月15日公開のシネマトゥデイのインタビューでは、制作統括の松川博敬氏がキャスティングの理由を具体的に説明している。
1. 強さと弱さを同時に表現できる
松川氏が重視したのは、信長の二面性だった。
信長には、弟を殺して武将としての道を歩み始めたという苦い過去がある。
その傷を抱えた人間らしい弱さと、天下統一を目指す武将としての迫力や覚悟。この両方を表現できる俳優として、小栗にオファーしたという。
2. カリスマ性と親しみやすさの両立
従来の信長像には、圧倒的な威厳や恐ろしさを前面に出したものも多い。
しかし『豊臣兄弟!』では、恐ろしさだけでなく、ふとした瞬間に見える弱さや親しみやすさも必要だった。
松川氏は小栗の芝居について、迫力があり怖い一方で、弱さや親しみやすさがにじみ出る点を評価している。
3. 豊臣兄弟との関係を成立させる存在感
もう一つの理由は、仲野太賀と池松壮亮との関係性だ。
本作は秀長と秀吉の兄弟愛を中心に描く作品である。その二人が仕える信長には、単なる権力者以上の存在感が求められる。
信長と信勝の悲しい兄弟関係を描くことで、豊臣兄弟の幸福な関係がより際立つ。
小栗の持つ威厳と人間味は、この対比を成立させるうえで重要だった。
松川氏は第6回での小栗の演技について、次のように評価している。
「脚本を超えた芝居だった」
これは信勝との別れを描いた場面への評価だ。台本に書かれた絶叫という演出を、小栗が表情や声の表現によって予想以上に深いものにしたと説明している。
制作側が期待した信長の人間性を、実際の演技で具体化した場面だった。
【役作りと演技評判】小栗旬は信長をどう解釈した?本能寺の変に込めた思い
小栗旬の今回の信長役で興味深いのは、最初から完成された人物像を作って演じたわけではない点だ。
2026年1月25日のTVガイドWebのインタビューで、小栗は役作りについて次のように語っている。
「今回は具体的にキャラクターを固めず、脚本に描かれている信長を演じることを心がけています」
この姿勢には、過去の信長役との違いも表れている。
初めて見た信長は渡哲也だった
小栗が初めて見た織田信長は、1996年の大河ドラマ『秀吉』で渡哲也が演じた信長だったという。
当時の信長は、小栗の記憶に強烈な恐ろしさを残した。
しかし、今回はそのイメージをそのまま再現するのではなく、脚本に描かれた人物を丁寧に演じることを意識した。
その結果、従来の威圧的な信長像に、孤独や葛藤が重なる人物表現につながった。
本能寺の変では「無様に死ぬ」ことを選んだ
2026年7月12日放送の第27回「本能寺の変」は、小栗演じる信長にとって最大のクライマックスとなった。
小栗は撮影について、実際の炎に囲まれたロケだったと明かしている。
特に印象的なのは、本能寺での信長の最期に対する解釈だ。
過去の作品では、信長が本能寺で最後まで戦う描写も多かった。しかし、小栗は今回は違う方向性を考えた。
さまざまな資料を読み、信長は逃げると決めたときには素早く行動できる人物だったという記述に着目したという。
そこで、小栗が考えたのは「なぜ今回は逃げられなかったのか」という疑問だった。
彼が導き出した解釈は、信長がすでに疲れ切っていたのではないかというものだった。
天下統一を目前にしながら、これ以上逃げて何を目指すのか。そうした心情を考え、一度は本気で逃げようとする演技を脚本家の八津弘幸氏に相談した。
「お前じゃない」は小栗旬のアドリブだった
第27回で視聴者の印象に残ったのが、幻の明智光秀(要潤)に向けた「お前じゃない」という言葉だ。
実は、このセリフは脚本にはなかった。
小栗によると、もし本能寺に現れたのが光秀ではなく秀吉だったなら、信長は喜んで死を受け入れたはずだという。
秀吉なら、自分の後に新しい世の中を作ってくれると信じられたからだ。
この解釈によって、「お前じゃない」という一言には、単なる謀反への怒りを超えた意味が生まれた。
信長が秀吉に抱いていた信頼と、最後まで満たされなかった孤独が交差する場面だったのである。
小栗旬の演技に対する評価
今回の演技について、特に注目すべきなのは制作統括による具体的な評価だ。
- 弟・信勝との別れでは、声と表情によって信長の内面を表現。
- 豊臣兄弟との場面では、信長の警戒心と信頼の変化を描写。
- 本能寺の変では、従来の英雄的な最期とは異なる人間らしい最期を選択。
また、小栗自身も、仲野太賀と池松壮亮の演技に刺激を受けたと語っている。
仲野の演じる小一郎の優しさ、池松の演じる秀吉の明るさと狂気。その二人の芝居が信長という人物を引き出してくれたという。
つまり、小栗の信長は一人で完成したキャラクターではない。共演者との関係によって深みを増した人物だった。
【徹底比較】2014年ドラマ・2016年映画『信長協奏曲』と2026年大河の違い
小栗旬の信長を語る際、避けて通れないのが『信長協奏曲』だ。
2014年のドラマと2016年の映画、そして2026年の『豊臣兄弟!』は、同じ俳優が信長を演じていても、人物設定や物語の目的が大きく異なる。
2014年『信長協奏曲』は現代人が信長になる物語
2014年10月から12月までフジテレビ系で放送された『信長協奏曲』は、石井あゆみの同名漫画を原作とする作品。
小栗が演じたのは、現代から戦国時代へタイムスリップした高校生・サブローと、本物の織田信長の二役だ。
サブローは自分と瓜二つの本物の信長から、代わりに信長として生きてほしいと頼まれる。
歴史に詳しくない現代人が戦国時代で天下統一を目指すという設定が特徴だ。
戦国武将の常識と現代人の感覚のずれが、笑いや感動を生み出していた。
2016年映画は『信長協奏曲』の物語の完結編
2016年1月23日に公開された映画版は、2014年のテレビドラマの続編にあたる。
物語の中心は、天下統一を目前にしたサブローと、本能寺の変をめぐる運命だ。
サブローは歴史の教科書を通じて、自分が織田信長として生きている以上、本能寺で命を落とす運命にあることを知る。
それでも帰蝶や家臣たちとともに未来を変えようとする。
映画版では、テレビドラマから続く人間関係を引き継ぎながら、歴史を変えられるのかという問いに向き合った。
2026年『豊臣兄弟!』は史実の信長を描く大河ドラマ
一方、『豊臣兄弟!』は現代人が信長になり代わる物語ではない。
小栗が演じるのは、豊臣兄弟の主君として戦国時代を生きる織田信長そのものだ。
最大の違いは、信長の視点ではなく、信長に仕える豊臣兄弟の視点から人物像が描かれることにある。
3作品の違いを整理すると、次のようになる。
| 比較項目 | 2014年ドラマ | 2016年映画 | 2026年大河 |
|---|---|---|---|
| 作品名 | 信長協奏曲 | 信長協奏曲 | 豊臣兄弟! |
| 小栗の役 | サブロー/信長 | サブロー/信長 | 織田信長 |
| 人物設定 | 現代の高校生が信長になる | ドラマ版の続編 | 歴史上の信長 |
| 物語の中心 | タイムスリップと天下統一 | 本能寺の変と運命 | 豊臣兄弟の出世と絆 |
| 人物の特徴 | 明るさ・現代的な感覚 | 愛情・運命への抵抗 | カリスマ性・孤独・葛藤 |
| 主な共演者 | 柴咲コウ、向井理、山田孝之 | 柴咲コウ、向井理、山田孝之 | 仲野太賀、池松壮亮、宮﨑あおい |
重要なのは、2014年と2016年の信長は、厳密には歴史上の信長本人を小栗がそのまま演じたものではないという点だ。
小栗自身も2026年のインタビューで、以前の信長は「フェイク」だったと振り返り、今回は正真正銘の信長を演じたかったという思いを明かしている。
したがって、2026年版は過去の演技を繰り返した作品ではなく、同じ人物名を持つ役に対する新たな挑戦と捉えるのが適切だ。
【出演歴・歴代俳優】小栗旬は大河10作目!歴代の織田信長役と比較
小栗旬は、今回の『豊臣兄弟!』で大河ドラマ出演10作目を迎えた。
子役時代から大河ドラマに出演しており、2022年の『鎌倉殿の13人』では北条義時役で主演を務めた。
小栗旬の大河ドラマ出演歴
これまでの主な出演作と役柄は次のとおり。
- 1995年『八代将軍吉宗』:徳川宗翰
- 1996年『秀吉』:佐吉(石田三成の少年時代)
- 2000年『葵 徳川三代』:細川忠利
- 2005年『義経』:梶原景季
- 2009年『天地人』:石田三成
- 2013年『八重の桜』:吉田松陰
- 2018年『西郷どん』:坂本龍馬
- 2022年『鎌倉殿の13人』:北条義時(主演)
- 2023年『どうする家康』:南光坊天海
- 2026年『豊臣兄弟!』:織田信長
1995年の『八代将軍吉宗』から始まった大河出演歴は、約31年に及ぶ。
特に『天地人』の石田三成、『鎌倉殿の13人』の北条義時など、歴史上の重要人物を演じてきた経験は、今回の信長役にもつながっている。所属事務所トライストーン・エンタテイメントの出演記録と、シネマトゥデイの報道でも10作目であることが確認できる。
織田信長を演じてきた歴代俳優
大河ドラマでは、これまで多くの俳優が織田信長を演じてきた。
代表的な俳優を挙げると、以下のようになる。
| 放送年・作品 | 信長役の俳優 | 位置づけ |
|---|---|---|
| 1996年『秀吉』 | 渡哲也 | 小栗が初めて見た信長 |
| 2002年『利家とまつ』 | 反町隆史 | 戦国大名としての信長 |
| 2020年『麒麟がくる』 | 染谷将太 | 明智光秀との関係を軸に描かれる信長 |
| 2023年『どうする家康』 | 岡田准一 | 徳川家康との関係を軸に描かれる信長 |
| 2026年『豊臣兄弟!』 | 小栗旬 | 豊臣兄弟との関係から描く信長 |
このほかにも、緒形直人、舘ひろし、豊川悦司、江口洋介、吉田鋼太郎など、多彩な俳優が信長を演じてきた。
歴代俳優の比較で大切なのは、誰が最も優れているかという単純な順位付けではない。
作品ごとに物語の中心人物が異なるため、信長に求められる役割も変わる。
例えば、明智光秀を中心に描く作品では信長との主従関係や対立が重要になり、家康を中心に描く作品では家康の人生に与えた影響が大きくなる。
『豊臣兄弟!』では、秀吉と秀長の成長を促す存在であると同時に、信長自身も兄弟関係に傷を抱えた人物として描かれた。
こうした作品の視点の違いこそ、歴代の信長役を比較する際の重要な判断基準になる。
【2026年11月最新】『豊臣兄弟!』の放送情報と小栗旬の信長の現在
2026年11月3日時点で、『豊臣兄弟!』は後半の展開に入っている。
NHK財団が運営するステラnetの番組情報によると、2026年1月4日に放送が始まり、全48回の構成となっている。
2026年11月の放送スケジュール
| 項目 | 放送情報 |
|---|---|
| 作品名 | 豊臣兄弟! |
| 主演 | 仲野太賀 |
| 秀吉役 | 池松壮亮 |
| 信長役 | 小栗旬 |
| 放送開始 | 2026年1月4日 |
| 最新放送回 | 第42回・11月1日放送 |
| 次回放送 | 第43回・11月8日予定 |
| 最終回 | 12月13日予定 |
| 総話数 | 全48回 |
主な放送時間は次のとおり。
- NHK総合:毎週日曜午後8時~8時45分
- NHK BS:毎週日曜午後6時~6時45分
- NHK BSP4K:毎週日曜午後0時15分~1時
- NHK総合の再放送:翌週土曜午後1時5分~1時50分
最終回は12月13日の日曜日に15分拡大版で放送される予定だ。
小栗旬の信長は第27回「本能寺の変」が大きな節目
ここで注意したいのが、2026年11月現在も『豊臣兄弟!』は放送中だが、小栗旬が演じる信長の物語上の大きなクライマックスはすでに放送されていることだ。
第27回「本能寺の変」は、2026年7月12日に放送された。
信長の最期が描かれ、小栗も放送後に役への思いや撮影秘話を明かしている。
一方、作品全体はその後も豊臣兄弟の天下統一と豊臣政権の展開を描き続けている。
加えて、NHK財団の2026年11月2日の発表によると、約1年半に及んだ撮影は10月30日に終了した。
つまり、11月以降は撮影現場の動向ではなく、完成した作品の終盤と最終回に注目が集まる時期に入ったといえる。
【小栗旬の信長】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:小栗旬が織田信長を演じるのは『豊臣兄弟!』が初めてですか?
小栗旬は2014年のドラマ『信長協奏曲』でも信長を演じています。ただし、こちらは現代の高校生サブローが信長になり代わる物語です。2026年の『豊臣兄弟!』では、歴史上の織田信長を演じており、本人も正真正銘の信長役を演じる夢がかなったと語っています。
Q2:小栗旬の信長役の起用理由は何ですか?
制作統括の松川博敬氏によると、人間らしい弱さと親しみやすさ、そして武将としての迫力と覚悟を同時に表現できることが理由です。豊臣兄弟と織田兄妹の対比を描く作品構成にも、小栗の存在感が適していたと説明しています。
Q3:『信長協奏曲』のドラマと映画はどちらから見るべきですか?
2014年のテレビドラマから見るのがおすすめです。2016年の映画はテレビドラマの続編であり、サブローと帰蝶、家臣たちの関係を引き継いでいます。物語を理解するにはドラマ、映画の順番が適しています。
Q4:『豊臣兄弟!』で小栗旬の信長が退場するのは何話ですか?
第27回「本能寺の変」です。2026年7月12日に放送されました。小栗旬は本能寺での最期について、実際の資料を読み込み、信長が逃げようとしたものの最後には諦めるという独自の解釈を取り入れています。
まとめ:小栗旬の信長は『信長協奏曲』から進化した新しい人物像
2026年の『豊臣兄弟!』で小栗旬が演じた織田信長は、過去の『信長協奏曲』とは異なる魅力を持つ人物だった。
2014年のドラマと2016年の映画では、現代人サブローの視点から、戦国時代を生き抜く信長の姿が描かれた。
それに対して2026年の大河ドラマでは、弟との悲しい過去や孤独、天下人としての責任を抱えた歴史上の信長に挑戦した。
特に注目すべき要点は3つある。
1. キャスティングの理由: 強さと弱さを両立できる小栗旬の表現力が評価された。
2. 役作りの方向性: 固定観念に頼らず、脚本と資料を読み込み、人物の内面を組み立てた。
3. 共演者との相乗効果: 仲野太賀と池松壮亮の演技が、信長の孤独と豊臣兄弟への信頼を際立たせた。
小栗旬の信長を評価する際には、歴代俳優との単純な優劣よりも、作品がどの人物の視点から信長を描いているかに注目したい。
『豊臣兄弟!』の信長は、天下統一を目指した英雄であると同時に、誰かに理解され、信頼されることを求めた一人の人間でもあった。
『信長協奏曲』で演じた信長と、『豊臣兄弟!』で演じた信長。その二つの役を見比べることこそ、小栗旬という俳優の表現の幅を知る大きな手掛かりになる。