「第3号被保険者制度が廃止される」「専業主婦も国民年金保険料を払わなければならなくなる」――。2026年、こうした話題が注目を集めています。厚生労働省は2026年9月4日、「国民年金第3号被保険者制度等に関する検討会」の初会合を開催し、制度の縮小に向けた議論と実態調査を開始しました。しかし、2026年11月6日現在、第3号被保険者制度そのものの廃止は正式決定しておらず、具体的な廃止日も発表されていません。
今回の見直しで焦点となっているのは、年収130万円の壁、短時間労働者への社会保険適用拡大、専業主婦・専業主夫の年金負担、そして育児や介護で働けない人への配慮です。2026年度には約2万人を対象とする実態調査も計画されており、その結果が今後の制度設計を左右する可能性があります。現行制度の仕組みから、廃止が議論される理由、家計への影響、今後のスケジュールまで整理します。
【2026年最新】3号廃止は決定した?いつから影響するのか
まず最も気になる結論から確認しましょう。2026年11月6日現在、国民年金第3号被保険者制度の全面廃止は決定していません。
ただし、単なる検討段階で何も動いていないわけでもありません。2025年の年金制度改正法、2026年7月の与党協議、同年9月に始まった厚生労働省の検討会によって、制度を縮小する方向性は明確になっています。
廃止決定と対象縮小は別の話
混同されやすいのが「第3号被保険者制度の廃止」と「対象者の縮小」です。
政府が進めているのは、短時間労働者への被用者保険の適用を広げ、これまで第3号被保険者だった人が厚生年金・健康保険に加入する機会を増やすことです。
つまり、現在の政策は第3号被保険者を一律に国民年金の第1号被保険者へ移すというものではありません。働いている人については、第2号被保険者として社会保険に加入する方向を目指しています。
2025年6月20日に公布された年金制度改正法(令和7年法律第74号)の附則では、第3号被保険者の実情について調査研究を行い、その在り方を検討することが定められました。これは廃止を決めた条文ではなく、国民的な議論に向けて実態を把握するための規定です。
2026年9月に厚生労働省の検討会が始動
大きな節目となったのが、2026年9月4日の第1回「国民年金第3号被保険者制度等に関する検討会」です。
厚生労働省年金局が設置したこの検討会では、制度を巡る現状と実態調査の方法が議題となりました。議事録は10月27日に公開されています。
検討会では、制度を利用する人の中に、パート勤務をしている人だけでなく、出産・育児、介護、看護、健康上の理由などで働くことが難しい人もいることが確認されています。
今後はこうした事情を把握したうえで、制度の縮小方法や必要な支援策を検討することになります。
全面廃止の開始日はまだ決まっていない
検索されることの多い「3号廃止は2027年から?」「2028年に専業主婦の保険料負担が始まる?」という疑問についても、現段階で確定した開始日はありません。
2027年から段階的に進む予定なのは、短時間労働者への社会保険適用拡大です。これは第3号被保険者制度そのものの廃止日ではありません。
制度の対象縮小については、2026年度の実態調査と課題整理を経て、2027年度も検討を続ける方針が示されています。
【制度の基本】第3号被保険者とは?廃止が議論される理由
第3号被保険者制度を理解するには、まず国民年金の被保険者区分を整理する必要があります。
日本の公的年金制度では、加入者の働き方や家族関係に応じて、第1号・第2号・第3号という区分が設けられています。
第3号被保険者になれる人の条件
第3号被保険者とは、厚生年金に加入している第2号被保険者に扶養されている配偶者のうち、一定の条件を満たす人です。
主な条件は次のとおりです。
- 20歳以上60歳未満であること。
- 厚生年金保険の第2号被保険者の配偶者であること。
- 原則として日本国内に住所があること。
- 配偶者によって生計を維持されていること。
- 年間収入が原則130万円未満であること。
重要なのは、第3号被保険者は専業主婦だけを対象にした制度ではないという点です。制度上は専業主夫も対象となり、男女による区別はありません。
保険料を払わなくても基礎年金を受け取れる仕組み
第3号被保険者の大きな特徴は、本人が国民年金保険料を直接納めなくても、その加入期間が保険料納付済期間として扱われることです。
第3号被保険者の基礎年金給付に必要な費用は、厚生年金制度全体で負担する仕組みになっています。したがって、配偶者の給与から本人分の国民年金保険料が個別に天引きされるわけではありません。
この仕組みにより、育児や家事などで収入を得られない期間があっても、将来の老齢基礎年金につながる加入期間を確保できます。
1985年の年金制度改革で創設された背景
第3号被保険者制度は、1985年の年金制度改正によって創設されました。
制度導入前は、会社員や公務員の配偶者が国民年金に任意加入する仕組みでした。そのため、加入していない専業主婦などは、自分名義の老齢年金を受け取れない場合があり、離婚後の年金保障や障害年金の受給資格にも問題がありました。
そこで、会社員などに扶養される配偶者も国民年金の適用対象とし、自分自身の年金権を確保できるようにしたのです。
当時の家族モデルでは、夫が会社で働き、妻が家庭を支えるという世帯が一般的でした。しかし、現在は共働き世帯や非正規雇用、単身世帯などが増えています。制度創設時と現在の社会構造の違いが、見直しの背景にあります。
【見直しの理由】なぜ3号廃止・対象縮小が必要とされるのか
第3号被保険者制度の見直しが進む背景には、単純な社会保険料の節約だけではなく、働き方の変化、公平性、年金制度の持続性という複数の問題があります。
理由1:共働き世帯が増え、制度創設時と家族構成が変化した
厚生労働省の2026年9月の検討会資料では、共働き世帯の増加が制度見直しの重要な背景として取り上げられています。
妻が64歳以下の世帯を対象とした資料では、2024年の共働き世帯は約1,222万世帯、男性雇用者と無業の妻からなる世帯は約398万世帯とされています。
かつて主流だった片働き世帯を前提とする制度を、現在の多様な働き方に合わせて見直す必要があるという考え方です。
理由2:働き方によって負担の公平性に差が生じる
第3号被保険者は本人の国民年金保険料を直接負担しません。一方、自営業者やフリーランスなどの第1号被保険者は、原則として自分で国民年金保険料を納めます。
また、共働き世帯では夫婦それぞれが社会保険料を負担するケースが多くあります。
こうした違いから、同じように基礎年金を受け取る制度でありながら、世帯構成や働き方によって負担が異なることへの疑問が生じています。
見直し論では、単身世帯や共働き世帯、自営業世帯との公平性をどう確保するかが重要な論点です。
理由3:130万円の壁が就業調整につながっている
第3号被保険者制度と密接に関係しているのが、いわゆる年収130万円の壁です。
扶養の範囲内で働く人が一定の収入を超えると、配偶者の社会保険の被扶養者から外れ、自分で社会保険料を負担する必要が生じる場合があります。
その結果、収入を増やすために労働時間を延ばしても、保険料負担によって手取りが減る可能性があります。この負担を避けるため、勤務時間を抑える就業調整が起きることが問題視されています。
政府が被用者保険の適用拡大を進めるのは、こうした働き控えを減らし、本人が働き方を選びやすくする狙いもあります。
制度見直しに関係する主体と政策の関係
| 主体・制度 | 役割・関係 | 2026年11月時点の状況 |
|---|---|---|
| 2025年年金制度改正法 | 第3号被保険者の実態調査と制度の在り方の検討を規定 | 成立・公布済み |
| 自民党・日本維新の会 | 第3号被保険者制度の縮小に向けた政策方針を整理 | 2026年7月に具体的な骨子を公表 |
| 厚生労働省 | 制度の現状分析、実態調査、制度設計の検討 | 2026年9月に検討会を開催 |
| 労働政策研究・研修機構(JILPT) | 第3号被保険者などを対象とする実態調査に協力 | アンケート・ヒアリング調査を実施する計画 |
| 被用者保険の適用拡大 | 短時間労働者を第2号被保険者へ移行させる政策 | 2026年10月から賃金要件撤廃、企業規模要件も段階的に縮小 |
ここで押さえたいのは、政府・与党が縮小方針を掲げていることと、制度廃止の法律が成立していることは違うという点です。
政策の方向性は固まりつつありますが、誰を対象に、どのような条件で制度を変更するのかは、今後の調査と議論に委ねられています。
【2026年度の実態調査】約2万人を対象に何を調べるのか
2026年の制度見直しで特に注目したいのが、厚生労働省が計画する第3号被保険者等に関する実態調査です。
第3号被保険者の中には、働ける環境がありながら扶養の範囲にとどまっている人もいれば、育児や介護などで働きたくても働けない人もいます。制度を見直すには、こうした異なる事情を区別する必要があります。
アンケートは20~59歳の約2万人が対象
厚生労働省が2026年9月4日に公表した調査資料によると、調査は労働政策研究・研修機構(JILPT)への研究要請に基づいて進められます。
Webアンケートの対象は、学生を除く20~59歳の男女で、年収260万円以下の人です。全体で約2万人を想定しています。
- 第1号被保険者:約5,000人
- 第2号被保険者:約5,000人
- 第3号被保険者:約9,000人
- 第3号から第2号に転換した人:第2号の内数として約1,000人を確保
調査対象は第3号被保険者だけではありません。第1号・第2号被保険者も比較対象にすることで、異なる働き方や保険料負担の実態を比較できる設計です。
育児・介護・健康状態や配偶者の意向も調査
今回の調査で特徴的なのは、単純な年収や労働時間だけでなく、働くことを制限している背景まで調べる点です。
具体的には、次のような項目が予定されています。
- 本人と配偶者の就業形態・収入
- 子どもの人数や年齢、保育の利用状況
- 親族などへの介護・看護の有無と負担時間
- 健康状態や就業を制限している理由
- 年収の壁を意識した就業調整の有無
- 家族手当や配偶者の勤務先の制度
- 第3号被保険者制度の見直しに対する意見
- 制度変更後に働き方をどう変えるかという意向
特に、育児・介護の事情は重要です。単に収入が少ないから扶養に入っているのか、それとも家族のケアのために働く時間を確保できないのかでは、必要な政策が異なります。
約70人への個別ヒアリングも実施
アンケートだけでは把握しにくい事情を確認するため、約70人を対象とするオンラインのデプスインタビューも計画されています。
内訳は、第3号被保険者が約50人、第2号被保険者が約10人、第1号被保険者が約10人です。1人あたり約60分をかけ、制度に対する認識や就業状況、育児・介護などの実情を聞き取る予定です。
第3号被保険者の調査では、無業・パート勤務、子どもの年齢、介護などによる就業制限といった違いを踏まえて対象者を選ぶ設計になっています。少数ではありますが、男性の第3号被保険者も調査対象です。
調査結果はいつ公表される?
厚生労働省は、アンケートとヒアリングの結果を2026年度中に取りまとめ、制度の課題を整理する方針です。
2026年度は2027年3月末までなので、調査結果の取りまとめは2027年3月までが目安になります。ただし、具体的な公表日が確定しているわけではありません。
検討会の議事録では、2026年度中に過去の制度改正議論の振り返りや調査結果の報告、構成員による専門的な意見交換を行い、その後、2027年度も検討を続ける方針が説明されています。
したがって、2026年度の実態調査は廃止日を決めるための単純な手続きではなく、制度の対象者や必要な支援策を具体化するための基礎資料と位置付けられています。
【年収130万円の壁】扶養から外れる条件と社会保険料への影響
第3号被保険者制度の見直しを考えるうえで、家計に直結するのが年収130万円の壁です。
ここでは、2026年10月に変更された106万円の壁との違いも含めて整理します。
106万円の壁は2026年10月1日に撤廃
2026年10月1日、短時間労働者が社会保険に加入する際の賃金要件である月額8万8,000円以上という条件が撤廃されました。
これまで年収約106万円の目安として意識されていた賃金要件は、現在は加入判定に使われません。
ただし、短時間労働者の社会保険加入条件がすべてなくなったわけではありません。2026年11月時点では、原則として週の所定労働時間が20時間以上であること、従業員数51人以上の企業で働いていること、学生ではないことなどが条件となっています。
つまり、106万円という年収そのものが社会保険加入の境界ではなくなり、週20時間以上という労働時間要件が重要になっています。
130万円の壁は現在も残っている
一方、年収130万円未満という第3号被保険者の被扶養者認定基準は、2026年11月現在も残っています。
年収130万円以上になる見込みで、勤務先の社会保険にも加入しない場合は、原則として配偶者の扶養から外れ、第1号被保険者として国民年金保険料を負担することになります。
健康保険についても、配偶者の被扶養者資格を失えば、自分で国民健康保険などに加入する必要が生じます。
ただし、勤務先の社会保険加入条件を満たす場合は、第2号被保険者となり、厚生年金と健康保険に加入します。この場合、必ずしも130万円を超えるまで待つ必要はありません。
扶養から外れる主な条件
実際に扶養から外れるかどうかは、収入だけでなく、勤務先の適用条件や労働時間によって変わります。
- 年収130万円以上となる見込みがある場合:原則として被扶養者認定の対象から外れる可能性がある。
- 週20時間以上働く場合:勤務先の企業規模などの条件を満たせば、年収130万円未満でも社会保険に加入する。
- 勤務先が社会保険の適用事業所である場合:労働時間や雇用条件に応じて加入対象になる。
- 配偶者が第2号被保険者でなくなった場合:第3号被保険者の資格要件を満たさなくなる。
なお、130万円の基準は単純に前年の確定申告上の所得だけで決まるものではありません。今後1年間の収入見込みを基本に、雇用契約や収入状況などを踏まえて判断されます。
2026年4月からは、雇用契約上の年収が130万円未満であることが明らかな場合、その契約内容を基に被扶養者として認定する取り扱いも導入されています。
一時的な収入増加なら扶養を継続できる場合もある
人手不足による残業や労働時間の延長などで、一時的に年収が130万円以上になった場合には、事業主の証明を利用できる仕組みがあります。
一定の条件を満たせば、事業主が一時的な収入増加であることを証明することで、原則として連続2回まで被扶養者認定を継続できる場合があります。
ただし、恒常的な賃金引き上げや契約変更などによって収入が増えた場合は、同じ扱いにはなりません。
社会保険適用拡大のスケジュール
2025年の年金制度改正法では、企業規模要件を段階的に縮小・撤廃することも決まりました。
- 2026年10月:月額8万8,000円の賃金要件を撤廃。
- 2027年10月:従業員36人以上の企業等へ適用拡大。
- 2029年10月:従業員21人以上の企業等へ適用拡大。
- 2032年10月:従業員11人以上の企業等へ適用拡大。
- 2035年10月:企業規模要件を撤廃。
このスケジュールは短時間労働者の被用者保険適用拡大に関するものです。第3号被保険者制度そのものの廃止スケジュールではないため、混同しないように注意してください。
【専業主婦・専業主夫への影響】保険料負担と将来の年金はどう変わる?
制度が縮小された場合、最も気になるのは、これまで保険料を直接負担してこなかった人の家計と老後の年金です。
ただし、影響は一律ではありません。今後どの制度区分に移るかによって、保険料負担も年金額も異なります。
第2号被保険者になれば厚生年金が上乗せされる
勤務先の社会保険に加入して第2号被保険者になった場合、本人と事業主が厚生年金保険料や健康保険料を負担します。
その分、給与から社会保険料が差し引かれるため、加入直後は手取りが減ることがあります。
一方、将来受け取る年金は、基礎年金だけでなく厚生年金の報酬比例部分も加わります。長期間加入して給与に応じた保険料を納めれば、老後の年金額が増える可能性があります。
社会保険加入は単なる負担増ではなく、傷病手当金などの保障や将来の年金給付にも関係する選択です。
第1号被保険者になれば国民年金保険料を自分で納める
一方、勤務先の社会保険に加入できず、第3号被保険者の資格も失った場合は、第1号被保険者となります。
この場合、国民年金保険料を原則として本人が全額負担します。健康保険も配偶者の扶養から外れるため、国民健康保険などの保険料負担が発生する可能性があります。
特に、働いていない専業主婦・専業主夫や、育児・介護で十分に働けない人が第1号被保険者へ移行する場合、家計への影響は小さくありません。
所得が少なく保険料を納めることが難しい場合には、国民年金保険料の免除・納付猶予制度などが関係しますが、将来の年金額への影響も考える必要があります。
すでに受け取る資格を得た年金が突然なくなるわけではない
「3号廃止によって、これまでの専業主婦期間の年金がゼロになる」という理解は正確ではありません。
現行制度では、第3号被保険者だった期間は保険料納付済期間として基礎年金に反映されます。制度が将来変更されたとしても、過去の加入記録が自動的に消えるという話ではありません。
問題になるのは、制度変更後の期間について、誰がどのような保険料を負担し、どのような年金給付を受けるのかという点です。
専業主婦・専業主夫の将来の年金への影響を判断するには、最終的な制度設計と経過措置を確認する必要があります。
育児・介護で働けない人への配慮はどうなる?
今回の見直しで慎重な議論が必要なのが、育児や介護を担う人への配慮です。
第3号被保険者には、就業調整をしている人だけでなく、乳幼児の育児、家族の介護・看護、本人の健康上の理由などによって就労が難しい人も含まれています。
2026年の実態調査では、子どもの年齢、保育利用、介護時間、健康状態なども確認する設計です。
検討会の議論でも、制度を縮小する場合には、育児や介護などで働けない人への支援を他の社会保障制度と合わせて検討する必要性が指摘されています。
例えば、育児休業給付、育児時短就業給付、介護休業制度、児童手当などとの関係を整理することが考えられます。
ただし、第3号被保険者に対する新たな保険料免除や特例措置が正式決定したわけではありません。今後の議論では、働ける人の就業促進と、働けない事情を抱える人の生活保障を両立できるかが大きな焦点になります。
【今後のスケジュール】2027年以降に何が起きる?
第3号被保険者制度の見直しは、2026年度の実態調査を出発点として、2027年度以降も議論が続く見通しです。
現時点で確認できる政策上の節目を整理すると、次のようになります。
2026年:実態調査と制度の課題整理
2026年9月4日に第1回検討会が開催され、制度の現状や実態調査の方針が確認されました。
2026年度中は、調査結果の取りまとめ、過去の制度改正議論の振り返り、専門家による意見交換などを進める予定です。
また、2026年10月1日には短時間労働者の賃金要件が撤廃され、被用者保険の適用拡大が新たな段階に入りました。
2027年:調査結果を踏まえた追加検討
厚生労働省の検討会では、2026年度の課題整理を経て、2027年度も引き続き検討する方針が説明されています。
調査結果からどのような対象者が制度を利用しているのかが明らかになれば、制度縮小の対象や必要な経過措置について、より具体的な議論につながる可能性があります。
ただし、2027年に全面廃止が始まるという確定した工程はありません。
2027~2035年:社会保険の適用拡大が段階的に進む
第3号被保険者制度の見直しとは別に、短時間労働者への社会保険適用拡大は法律に基づいて段階的に進みます。
2027年10月から企業規模要件の縮小が始まり、2035年10月に撤廃される予定です。
こうした適用拡大によって、これまで扶養内で働いていた人が厚生年金・健康保険に加入する機会は広がっていきます。
現時点で未確定の項目
2026年11月6日現在、次の項目は確定していません。
- 第3号被保険者制度の全面廃止を実施するかどうか。
- 制度を縮小する場合の具体的な対象者と条件。
- 専業主婦・専業主夫に新たな保険料負担を求める場合の詳細。
- 育児・介護などで働けない人に対する特別な配慮。
- 制度変更に伴う経過措置や既存加入者への対応。
- 第3号被保険者制度そのものの最終的な施行日。
厚生労働省の検討会の公開ページでは、第1回会合の議事録まで確認できますが、次回の具体的な開催日時はまだ公表されていません。
したがって、2026年11月時点で「2027年から3号廃止」「2028年から全員が保険料負担」といった情報を確定事項として受け取るのは適切ではありません。
【プロの結論】3号廃止で損をしないために今から確認すべきこと
今回の制度見直しで大切なのは、単純に扶養を維持するか、社会保険に加入するかという二択で考えないことです。
実際には、本人の収入、週の労働時間、勤務先の規模、家族の状況、将来の年金見込みなどによって、適した選択は変わります。
扶養内で働いている人が確認したい3つのポイント
1. 勤務先の社会保険加入条件を確認する
2026年10月以降は月額8万8,000円の賃金要件がなくなっています。週20時間以上働き、勤務先の企業規模などの条件を満たす場合、130万円未満でも社会保険加入の対象になることがあります。
2. 年収130万円の判定方法を確認する
扶養認定は今後1年間の収入見込みが基本です。前年の年収だけで判断せず、雇用契約書や勤務条件、今後の収入見込みを確認しましょう。
3. 手取りだけでなく将来の年金も比較する
社会保険加入によって短期的な手取りが減っても、厚生年金の加入期間や保障が増える場合があります。現在の家計と老後の生活設計を合わせて考えることが大切です。
特に慎重な確認が必要な人
次のような人は、制度改正の情報だけでなく、勤務先や年金事務所などで個別の条件を確認することをおすすめします。
- 育児や介護のために長時間働くことが難しい人。
- パート勤務で年収130万円前後の人。
- 複数の勤務先で働くマルチワーカー。
- 配偶者の勤務先から家族手当を受け取っている人。
- 今後、厚生年金への加入を検討している人。
- 健康上の理由で就業時間を増やせない人。
特に、配偶者の勤務先が支給する家族手当・配偶者手当は、公的年金制度とは別の企業独自の制度です。社会保険の扶養条件と会社の家族手当の条件が一致するとは限らないため、就業時間を変更する前に確認する必要があります。
3号廃止に関するよくある質問(FAQ)
Q1:第3号被保険者制度は2027年から廃止されますか?
A1:2026年11月6日現在、2027年から全面廃止されることは決定していません。2026年度中に実態調査と課題整理を行い、2027年度も検討を続ける方針です。
Q2:年収130万円の壁は2026年に撤廃されましたか?
A2:撤廃されていません。2026年10月1日に撤廃されたのは、短時間労働者の社会保険加入要件だった月額8万8,000円の賃金要件、いわゆる106万円の壁です。130万円の被扶養者認定基準は現在も残っています。
Q3:3号廃止によって専業主婦の年金はなくなりますか?
A3:そのような決定はありません。現行制度では、第3号被保険者期間は基礎年金の保険料納付済期間として扱われます。将来制度が変更された場合の保険料負担や給付の取り扱いは、今後の制度設計によって決まります。
Q4:専業主夫も第3号被保険者制度の見直し対象ですか?
A4:対象です。第3号被保険者制度は男女共通の仕組みであり、厚生年金加入者に扶養される配偶者であれば、男性も第3号被保険者になれます。
Q5:2026年度の実態調査はいつ結果が出ますか?
A5:厚生労働省は2026年度中に調査結果を取りまとめる方針です。2026年度は2027年3月末までですが、具体的な公表日は確定していません。
まとめ:3号廃止は未決定、2027年度以降の制度設計が焦点
2026年11月6日現在、第3号被保険者制度の全面廃止は決定していません。一方、政府・与党は対象縮小に向けた方針を示しており、厚生労働省も2026年9月に専門の検討会を立ち上げました。
今後の重要な節目は、約2万人を対象とする実態調査の結果と、2026年度中に予定されている課題整理です。2027年度も検討が続くため、制度の具体的な変更内容や施行時期は、その議論を踏まえて明らかになっていくと考えられます。
また、2026年10月には106万円の賃金要件が撤廃されましたが、130万円の壁は残っています。社会保険の適用拡大と第3号被保険者制度の見直しは関連するものの、同じ政策ではありません。
今後の制度変更で最も重要なのは、働ける人の就業機会を広げることと、育児・介護などで働けない人の生活保障を両立させることです。専業主婦・専業主夫の年金や保険料負担についても、単純な廃止論だけでなく、経過措置や支援策を含めた制度設計が大切です。
現段階では、廃止日を予測して慌てて働き方を変える必要はありません。勤務先の社会保険加入条件、現在の扶養認定、将来の年金見込みを確認しながら、厚生労働省の調査結果と2027年度以降の議論を注視することが、家計と老後の生活を守るための現実的な対応です。