田中氏の再選によって、2期目の市政で具体化が期待されるのが、中核市への移行と市立高校の新設です。
どちらも単なる行政手続きや施設整備ではありません。市川市が今後どのような都市を目指すのかを左右する政策です。
中核市への移行で市民生活はどう変わる?
市川市は人口50万人規模の都市となり、田中市長は人口規模にふさわしい行政サービスを提供するため、中核市への移行を検討する方針を示しました。
中核市への移行によって期待されるのは、これまで千葉県が担ってきた行政事務の一部を市が主体的に担うことです。
特に関係するのは次の分野です。
- 保健所に関する行政
- 児童相談所に関する行政
- 動物愛護センターに関する行政
- 福祉・保健分野の行政サービス
市が直接対応できる業務が増えれば、地域の実情に応じた迅速な対応につながる可能性があります。
ただし、中核市移行には課題もあります。
市川市議会の過去の答弁では、財政への影響や専門職員の確保が課題として挙げられ、2024年時点では移行を推進する状況にないとの考えが示されていました。
それが2026年の市長選挙では、田中氏が改めて移行に向けた検討を掲げています。
政策の方向が変わった背景には、人口規模の拡大に合わせて行政サービスのあり方を見直す必要性があります。
もっとも、選挙公約に掲げたことと、実際に中核市へ移行したことは別です。今後は財政負担、職員体制、県との協議、移行によって市民が受ける具体的なメリットを確認する必要があります。
市川市立高校の新設構想と教育改革
市川市立高校の創設は、田中氏の2期目を象徴する政策の一つです。
市川市には県立高校や私立高校がありますが、市立高校を新設することで、市内の中学生に新しい進路の選択肢を提供するという構想です。
田中氏が示している教育構想には、次のような特徴があります。
- インターナショナル・バカロレア認定校を目指す
- 民間から校長を登用する
- 優秀な指導者を招へいする
- 市立中学校からの進学先として特色を持たせる
- 特別支援学校の増設も検討する
インターナショナル・バカロレア(IB)は、国際的な教育プログラムです。探究型の学習や国際的な視野を育てる教育を目指す点が特徴となっています。
一方、保戸田氏は市立高校の新設に反対しました。
少子化や高校の定員割れが課題となる中、新しい学校をつくるよりも、既存の教育環境や教員待遇を改善することが先決だという立場です。
この対立は、単純な賛成・反対ではありません。
| 比較項目 | 田中氏 | 保戸田氏 |
|---|---|---|
| 基本方針 | 新しい市立高校を創設 | 既存の教育環境を改善 |
| 教育の方向性 | 国際教育・特色ある学校 | 現場の教育の質を重視 |
| 行政の役割 | 新たな教育機関を整備 | 既存施設や制度を活用 |
2026年6月の市議会では、市立高校の創設について、必要性や既存の私立高校との役割分担、IB認定校の構想などが質問に取り上げられました。
つまり、選挙で掲げられた構想は、現在、議会で具体的な検討課題になっています。
スタジアム・環境政策も2期目の注目テーマ
田中氏の政策は教育と行政改革だけではありません。
Jリーグ参画基準を満たすスタジアムについても、必要性が生じた場合には整備を検討する方針を示しています。
また、脱炭素先行地域としての取り組み、ごみの分別収集、資源の再利用や減量化なども政策に含まれています。
ただし、スタジアムについては建設が決定したという意味ではありません。
市民生活に直接関わる保育や医療、福祉と、大規模なスポーツ施設や文化施設の整備をどういう順番で進めるのか。財政面も含めた優先順位が問われます。
【子育て支援・高齢者支援】再選後に実際に動き出した政策
選挙公約を評価する際には、将来構想だけでなく、すでに実施された政策を見ることも欠かせません。
2026年11月時点で注目したいのが、第1子の保育料無償化と市川こども手当です。
第1子の保育料無償化は2026年9月に開始
田中市長が掲げた子育て支援のうち、具体的な制度として動き出したのが第1子の保育料無償化です。
市川市の公式発表によると、2026年9月から、認可保育施設を利用する0~2歳児について、第1子も保育料無償化の対象になりました。
主な内容は次のとおりです。
- 開始時期:2026年9月
- 対象:市川市に住む0~2歳児
- 対象施設:公立・私立保育園、認定こども園、小規模保育事業など
- 所得制限:なし
- 内容:対象児童の保育料を無料化
従来から無償化されていた3~5歳児に加え、0~2歳児の第1子にも対象を広げた点が特徴です。
市川こども手当は月額15,000円
もう一つの柱が、市川こども手当です。
これは、保育施設に預けず家庭で子どもを育てる世帯も支援するために創設された制度です。
重要なのは、すべての子どもに一律で15,000円が追加支給される制度ではないという点です。
保育料無償化の対象となる子どもと、家庭で育てるために市川こども手当の対象となる子どもを分け、家庭の子育てスタイルに応じて支援する仕組みです。
市川市は、この2つを組み合わせた「選べる市川子育てスタイル」を2026年9月から開始しています。
高齢者支援では外出支援と介護予防が焦点
田中氏は1期目の実績として高齢者支援にも言及しており、2期目の市政でも高齢者が安心して暮らせる環境づくりが課題です。
2026年6月の市長所信表明では、次のような取り組みが示されました。
- 「チケット75」による外出支援
- 「いちわかプログラム」によるフレイル予防
- 制度の狭間にある生活課題への包括的な相談・支援
- 行徳地域への生活介護施設の整備
特に外出支援とフレイル予防は、高齢者の社会参加や健康維持に関係する施策です。
施設を整備するだけでなく、実際に利用する高齢者が増えるか、地域ごとの交通事情に対応できるかが評価のポイントになります。
保戸田氏の減税公約は実現したのか?
ここは誤解しやすい部分です。
個人市民税や固定資産税の負担軽減は、保戸田氏が選挙公報で掲げた政策です。保戸田氏は当選していないため、この公約が市長選の結果によってそのまま市の正式な政策になったわけではありません。
また、2026年11月時点で確認できる市の子育て施策は、田中市長が掲げた保育料無償化や市川こども手当などです。
税負担の軽減を求める市民の声については、今後の市政や市議会でどのように議論されるかが注目されます。
【投票率31.97%の背景】市川市長選挙の歴代結果と低下の理由
今回の選挙で、田中氏の再選と同じくらい注目すべきなのが投票率です。
2026年の投票率31.97%は、前回2022年の38.75%を6.78ポイント下回りました。
2018年・2022年・2026年の投票率を比較
市川市長選挙の過去の結果を振り返ると、次のようになります。
| 投票日 | 主な結果 | 投票率 |
|---|---|---|
| 2018年4月22日 | 村越祐民氏が当選 | 33.97% |
| 2022年3月27日 | 田中甲氏が初当選 | 38.75% |
| 2026年4月19日 | 田中甲氏が再選 | 31.97% |
2018年の選挙は、2017年の市長選挙で法定得票数を満たす候補者がいなかったことによる再選挙でした。
2018年は村越祐民氏が46,143票、田中氏が42,931票を獲得しています。
2022年には田中氏が65,567票で初当選。2026年には90,576票まで得票を伸ばしました。
一方で、投票率は2022年をピークに低下しています。
投票率が下がった理由は何か?
2026年の投票率低下について、数字から確認できる事実は次の3点です。
1.投票者数が減少した
2022年の投票者数は155,197人でしたが、2026年は129,044人です。
その差は26,153人に上ります。
2.立候補者数が減った
2022年は6人が立候補しましたが、2026年は3人でした。
候補者の数が半減し、政策の選択肢や選挙戦の構図が変わったことは確認できます。ただし、それが投票率低下の直接的な原因だったと断定できるデータはありません。
3.市政への関心と投票行動には別の課題がある
市立高校の新設、中核市移行、減税、子育て支援など、生活に関係する政策は複数の争点になりました。
それでも投票率は31.97%にとどまっています。
地域選挙では、国政選挙と比べて市長の権限や政策の影響が伝わりにくいことも、一般的な課題です。ただし、今回の投票率低下について、有権者への意識調査などによる原因の特定は確認できません。
したがって、投票率低下を単純に「市民が市政に無関心だから」と説明するのは適切ではありません。
むしろ、選挙結果だけでなく、投票に参加しなかった約27万4,000人に市政の情報をどう届けるかが、今後の課題です。
選挙公報は候補者の政策を確認する重要資料
候補者の政策を調べるなら、選挙公報を確認することが有効です。
市川市選挙管理委員会は、2026年4月19日執行の市長選挙について、公式サイトで選挙公報を公開しています。
選挙公報は候補者から提出された原稿をそのまま印刷した資料です。
そのため、候補者本人が何を約束したのかを確認できます。
特に次の項目を照らし合わせると、政策の実現可能性を判断しやすくなります。
- 具体的な実施内容が示されているか
- 財源や予算の考え方があるか
- 実施時期が明確か
- 市長の権限で実現できる政策か
- 市議会や県との調整が必要な政策か
選挙公報に書かれた政策と、実際の行政計画や予算を区別して読むことが大切です。
【次回の市川市長選挙はいつ?】田中甲氏の任期と2030年の展望
2026年の市川市長選挙は任期満了による選挙でした。
市川市選挙管理委員会が2025年11月に公表した選挙日程では、前任期の満了日は2026年4月21日とされ、投票日はその直前の4月19日に設定されました。
市長の任期は4年間です。
したがって、次回の市川市長選挙は2030年春ごろが目安となります。ただし、2026年11月時点で次回の具体的な投票日は決まっていません。
2030年に向けて検証すべき5つの政策
田中市長の2期目は、2026年の選挙公約をどれだけ具体的な成果に結びつけられるかが問われる4年間です。
今後、特に注目したいのは次の5項目です。
1. 中核市移行: 財政負担や専門職員の確保を解決し、市民サービスの向上につなげられるか。
2. 市立高校: 建設費や運営費、開校時期、既存高校との役割分担を明確にできるか。
3. 子育て支援: 第1子保育料無償化と市川こども手当を継続的に運営できるか。
4. 高齢者福祉: 外出支援や介護予防を市内各地域に行き渡らせられるか。
5. 財政運営: スタジアムや文化施設などの大型事業と、日常生活に必要な行政サービスのバランスを保てるか。
市長選挙は当選者を決めるだけではありません。選挙で掲げられた政策が、予算や行政計画にどのように反映されるかを追い続けることが重要です。
【市川市長選挙】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:2026年の市川市長選挙で当選したのは誰ですか?
A1:現職の田中甲氏です。2026年4月19日の投開票で90,576票を獲得し、再選しました。
Q2:保戸田悠菜氏と山崎健介氏の得票数は何票ですか?
A2:保戸田悠菜氏は33,430票、山崎健介氏は2,892票でした。いずれも無所属の新人候補です。
Q3:2026年の市川市長選挙の投票率は何%ですか?
A3:31.97%です。前回2022年の38.75%と比較すると、6.78ポイント低下しました。
Q4:保戸田悠菜氏の公約には何がありましたか?
A4:個人市民税・固定資産税の負担軽減、水道料金の一部助成、保育料無償化、18歳までの医療費無償化、子育て施設の新設などです。
Q5:市川市立高校はいつ新設されますか?
A5:田中市長が創設を検討する方針を掲げていますが、具体的な開校時期や整備場所などは、今後の計画や議会での検討が必要です。IB認定校を目指す構想も示されています。
Q6:市川市は中核市に移行したのですか?
A6:2026年11月時点で、移行が完了したということではありません。田中市長が移行に向けた検討を進める方針を示しており、財政面や人員体制などの調整が課題です。
Q7:次回の市川市長選挙はいつですか?
A7:市長の任期は4年間のため、次回は2030年春ごろが目安です。正式な投票日は今後、市川市選挙管理委員会が決定します。
まとめ:市川市長選挙2026が示した市政の課題と今後の焦点
2026年4月19日の市川市長選挙では、田中甲氏が90,576票を獲得し、保戸田悠菜氏、山崎健介氏を破って再選しました。
得票率71.4%という結果は、田中氏が投票者から強い支持を得たことを示しています。
一方、投票率は31.97%まで低下しました。選挙で示された政策に対する支持と、市民全体の市政への関心を同じものとして扱うことはできません。
今回の選挙で浮き彫りになったのは、市川市の将来像をめぐる政策の違いです。
田中氏は中核市移行や市立高校の新設など、行政機能と都市の魅力を高める方向を提示しました。保戸田氏は減税や子育て支援を通じて家計を守る政策を訴え、山崎氏は市役所の人事や補助金制度の改革を掲げました。
再選後の市政では、第1子の保育料無償化や市川こども手当が実際に始まっています。その一方で、中核市移行や市立高校の創設といった大型構想には、財政負担や人材確保、必要性の検証が欠かせません。
【プロの結論】再選の評価は、得票数ではなく4年間の実行力で決まる
今回の結果を読み解くうえで、押さえておきたい要点は3つです。
- 選挙結果の評価: 田中氏は明確な勝利を収めたが、投票率の低さは市政への参加を広げる課題を残した。
- 政策の評価: 子育て支援のように実施された政策と、中核市移行や市立高校のように今後の検討が必要な構想を区別する。
- 市民の判断基準: 公約の実現状況だけでなく、予算、財源、事業の優先順位、行政サービスの改善まで確認する。
市川市の未来を左右するのは、選挙で掲げた大きな構想だけではありません。日々の暮らしに必要な医療、教育、福祉、交通、税負担をどれだけ改善できるかです。
2030年の次回市長選挙に向けて、田中市政がどの政策を実現し、どの課題を残すのか。市民にとっては、今後の予算編成や市議会での議論を継続的に確認することが、最も確かな市政評価につながります。