2026年11月4日時点で、日本国憲法は1946年の公布以来、一度も改正されていません。
2026年11月3日には公布から80年を迎えました。改正を目指す政治的な動きは活発になっていますが、国会発議から国民投票へ進む段階には至っていません。
2026年の衆議院憲法審査会の動き
第222回国会は2026年10月5日から12月12日までの日程で開かれています。
衆議院憲法審査会では、次の会合が確認できます。
| 日付 | 審議内容 |
|---|---|
| 2026年10月22日 | スイス・ハンガリー・イタリアの憲法及び国民投票制度に関する調査報告 |
| 2026年10月29日 | 国民投票広報協議会の関係諸規程 |
特に10月29日の審議では、国民投票広報協議会の運営に関係する規程が取り上げられました。
国民投票を実施する場合、国民が改正案の内容を正しく理解できるように情報を提供することが欠かせません。こうした運営面の準備も、憲法改正をめぐる重要な議論の一つです。
高市政権が掲げる憲法改正と残された課題
2026年11月時点では、高市早苗首相が憲法改正の実現に意欲を示しています。
主な論点として挙げられているのが、次のテーマです。
- 緊急事態条項の創設
- 大規模災害などに備えた国会議員の任期延長
- 緊急時における内閣の権限
- 憲法9条と安全保障の関係
特に緊急事態条項については、前の特別国会で衆議院法制局が改正条文のイメージ案を提示する段階まで議論が進みました。
そこでは、選挙の実施が困難になった場合の国会議員の任期延長や、内閣による緊急政令の制定などが検討対象となっています。
ただし、条文イメージ案の提示と正式な憲法改正原案の国会発議は、まったく異なる段階です。
政治的な主張や審査会での検討が進んでも、それだけで憲法改正の手続きが成立するわけではありません。
衆議院と参議院の議席構成が発議の鍵
2026年の政治情勢で重要なのが、衆議院と参議院の議席構成の違いです。
報道によると、衆議院では2026年9月28日時点で自民党・無所属の会が315議席を持ち、総議員465人の3分の2に当たる310議席を上回っています。
一方、参議院では与党が少数勢力となっており、衆議院と同じように発議に必要な賛成を確保できる状況ではありません。
加えて、改憲をめぐる野党間の意見の違いや、国民的な合意形成も課題として残っています。
2026年の状況を正しく理解するには、国民投票法が改正されたことと、憲法改正そのものが実現したことを区別する必要があります。
【歴史と公布】日本国憲法はなぜ80年間改正されていないのか

現在の憲法改正手続きを理解するには、日本国憲法がどのような経緯で制定されたのかを知ることも大切です。
日本国憲法は、第二次世界大戦後の1946年11月3日に公布され、1947年5月3日に施行されました。
日本国憲法が成立するまでの経緯
国立国会図書館の「日本国憲法の誕生」に掲載されている年表によると、制定までには政府とGHQの協議、帝国議会での審議など、複数の段階がありました。
主な出来事を整理します。
| 年月日 | 出来事 | 意味 |
|---|---|---|
| 1945年10月25日 | 松本委員会設置 | 政府による憲法改正の検討 |
| 1946年2月3日 | マッカーサーが3原則を提示 | GHQ草案作成の指示 |
| 1946年2月13日 | GHQ草案を日本側に提示 | 憲法改正の協議が進展 |
| 1946年4月17日 | 政府が憲法改正草案を発表 | 政府案の公表 |
| 1946年6月20日 | 帝国議会に改正案を提出 | 議会での本格審議 |
| 1946年10月29日 | 枢密院が可決 | 天皇による裁可 |
| 1946年11月3日 | 日本国憲法公布 | 新憲法の公布 |
| 1947年5月3日 | 日本国憲法施行 | 新憲法の効力発生 |
当時の日本政府は、明治憲法の改正という形式で新しい憲法を制定しました。
帝国議会では衆議院と貴族院による審議が行われ、修正を経て最終的に可決されました。その後、枢密院での審議と天皇の裁可を経て、1946年11月3日に公布されています。
天皇による公布はどのような意味を持つのか
現在の憲法改正手続きにおいても、天皇による公布は最終段階に位置付けられています。
日本国憲法第96条第2項は、国民投票で承認された憲法改正について、天皇が国民の名で公布すると定めています。
ここで重要なのは、天皇が改正案の内容を独自に判断したり、国民投票の結果を覆したりする仕組みではないことです。
国民の承認を得た改正内容を、憲法に定められた形式に従って公布する役割を担います。
つまり、憲法改正の最終的な判断主体は国民であり、天皇による公布はその決定を正式に公示する手続きです。
なぜ80年間、一度も改正されていないのか
日本国憲法は施行から約80年間、一度も条文が改正されていません。
その背景には、複数の事情があります。
第一に、衆議院と参議院の双方で総議員の3分の2以上の賛成を得る必要があることです。
通常の法律よりも高いハードルが設けられているため、政党間の意見が大きく分かれるテーマでは、発議まで進むこと自体が難しくなります。
第二に、憲法改正の内容について国民的な合意を形成する必要があることです。
憲法は国の統治の基本や国民の権利を定める最高法規です。安全保障、緊急事態、基本的人権、地方自治など、改正の対象によって社会への影響は異なります。
第三に、国会発議の後にも国民投票という独立した判断の機会が設けられていることです。
国会で3分の2以上の賛成を得たとしても、国民の過半数の承認がなければ改正は成立しません。
この二段階の仕組みが、憲法改正を慎重に進める制度的な理由になっています。
【憲法改正の流れ】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:憲法改正には国会で何人の賛成が必要ですか?
A1:衆議院と参議院のそれぞれで、総議員の3分の2以上の賛成が必要です。出席議員だけを基準にするのではありません。両院で条件を満たす必要があります。
Q2:憲法改正の国民投票はいつ実施されますか?
A2:国会発議の日から60日以後180日以内に実施されます。具体的な期日は国会の議決によって決まります。
Q3:憲法改正の国民投票は何歳から投票できますか?
A3:満18歳以上の日本国民に投票権があります。外国籍の住民には投票権がありません。
Q4:国民投票で過半数の賛成があれば憲法改正は成立しますか?
A4:国会発議を経た改正案について、賛成票が賛否の投票総数の過半数を超えれば、国民の承認があったものとされます。その後、天皇による公布の手続きに進みます。
Q5:2026年10月31日の国民投票法改正で憲法改正が簡単になったのですか?
A5:いいえ。今回の改正は、投票立会人や開票立会人の選任要件、FM放送による広報などを整備したものです。衆参両院の3分の2以上という発議要件や、国民投票の過半数という成立要件は変更されていません。
Q6:日本国憲法はこれまで一度も改正されていないのですか?
A6:はい。1947年5月3日の施行以来、2026年11月4日時点でも憲法の条文は一度も改正されていません。
まとめ:今後の憲法改正は国会の合意と国民の判断が焦点
憲法改正の流れを理解するうえで、最も重要なのは、国会発議と国民投票という二つの大きな関門があることです。
改正原案の作成・提出から憲法審査会での審査、衆参両院の本会議での可決を経て、初めて国会発議に至ります。その際、各院の総議員の3分の2以上の賛成が必要です。
加えて、発議後60日から180日以内に実施される国民投票で過半数の賛成を得なければなりません。最終的には天皇による公布を経て、憲法改正が実現します。
2026年10月31日に施行された令和8年法律第73号は、国民投票の運営環境を整える制度改正です。憲法改正の成立要件そのものを変更したものではありません。
【プロの結論】2026年の憲法改正を見極める3つの判断基準
今後の報道や国会審議を追う際には、次の3点を確認することが大切です。
1. 正式な憲法改正原案が提出されたか: 政党の公約や審査会での議論と、正式な原案提出を混同しない。
2. 衆参両院で3分の2以上の合意が形成されているか: 衆議院だけの議席状況で発議の可能性を判断しない。
3. 国民投票の公平性が確保されているか: 広報の中立性、ネット広告、資金規制、情報へのアクセスなども確認する。
2026年の憲法改正論議は、公布80年という節目を迎え、制度論から具体的な政治判断へ進む局面にあります。
ただし、国会での議論が進むことと、実際に憲法が改正されることは別問題です。最終的な決定権を持つのは国民です。
改正案の内容だけでなく、どのような手続きを経て提案され、国民にどのような選択肢が示されるのか。その過程を理解することが、憲法改正を考えるうえで欠かせません。